応用情報技術者試験 過去問 2011年(平成23年) 秋期 午後 問4

サーバの仮想化

S社では,社内システムで使用しているサーバの電力使用量と設置スペースを削減するために,サーバの仮想化を検討することにした。そのための準備として,経理システムと人事システムを対象に,両システムのサーバの現状を調査した。調査結果を表1に示す。各サーバはCPU数とメモリ容量だけが異なっていた。

表1 経理システムと人事システムのサーバの調査結果
サーバ CPU数 メモリ容量 状態 平均CPU使用率 平均メモリ使用率
経理APサーバ1 1 1Gバイト アクティブ 30% 80%
経理APサーバ2 1 1Gバイト アクティブ 30% 80%
経理DBサーバ1 2 2Gバイト アクティブ 40% 80%
経理DBサーバ2 2 2Gバイト スタンバイ 0% 20%
人事APサーバ1 1 1Gバイト アクティブ 20% 80%
人事APサーバ2 1 1Gバイト アクティブ 20% 80%
人事DBサーバ1 2 2Gバイト アクティブ 30% 80%
人事DBサーバ2 2 2Gバイト スタンバイ 0% 20%
注記:AP:アプリケーション,DB:データベース

冗長構成の考え方

  1. 両システムとも,APサーバはアクティブ/アクティブの2台構成で負荷分散しており,どちらかのサーバで障害が発生した場合でも,残ったサーバによって,業務は停止することなく継続して行える。DBサーバは共有ディスク方式のアクティブ/スタンバイ構成で,共有ディスクでDBを管理している。アクティブなDBサーバで障害が発生すると,スタンバイのDBサーバにフェイルオーバし,業務を継続する。
  2. 障害が発生したAPサーバが復旧すると,アクティブなAPサーバとして負荷分散に加わる。障害が発生したDBサーバが復旧すると,スタンバイのDBサーバとして,アクティブなDBサーバの障害に備える。

サーバ仮想化のホストサーバ

サーバ仮想化のホストサーバとなる物理サーバにはブレードを使用する。1枚のブレード上には,4コアのCPUを一つと,メモリを4Gバイト搭載している。1コア当たりの性能は,仮想化とマルチコアによるオーバヘッドを考慮して,現行サーバのCPU一つと同等である。

サーバ仮想化の構成案

サーバ仮想化を検討する際,次の2点を前提とした。

前提1 物理,仮想を問わず,サーバに障害が発生した際に業務が停止する時間は,現行システムより長くならないこと。

前提2 性能は,障害発生時を除き,現行システムより低下しないこと。

この前提を踏まえて,サーバ仮想化の構成案を二つ考えた。両案とも,3枚のブレードを使用し,APサーバ,DBサーバの冗長構成の考え方には,〔冗長構成の考え方〕を採用する。

表2の構成案1は,ブレード3を予備のブレードとして使用する案である。この構成では,ブレード1又はブレード2で障害が発生すると,各仮想サーバは〔冗長構成の考え方〕(1)に従って業務を継続する。その後,障害が発生したブレードに割り当てられていたディスクがブレード3に割り当てられ,ブレード3は,障害が発生したブレードと全く同じものとして起動される。元のブレード上で稼働していた仮想サーバも自動的に起動される。その際に起動される各仮想サーバは〔冗長構成の考え方〕(2)に従って動作する。

表2 構成案1
物理サーバ 仮想サーバ
ブレード1 経理APサーバ1,経理DBサーバ1,人事APサーバ2,人事DBサーバ2
ブレード2 経理APサーバ2,経理DBサーバ2,人事APサーバ1,人事DBサーバ1
ブレード3 予備

表3の構成案2は,ブレード3を両システムのAPサーバ2とDBサーバ2として使用する案である。ブレードで障害が発生すると,各仮想サーバは〔冗長構成の考え方〕(1)に従って業務を継続する。

表3 構成案2
物理サーバ 仮想サーバ
ブレード1 経理APサーバ1,経理DBサーバ1
ブレード2 人事APサーバ1,人事DBサーバ1
ブレード3 経理APサーバ2,経理DBサーバ2,人事APサーバ2,人事DBサーバ2

可用性

物理サーバのハードウェア障害に対する経理システムの可用性を考える。

現行のサーバ1台の可用性をpとし,DBサーバ障害時のフェイルオーバに要する時間は考えないものとすると,現行の経理システムの可用性は,

(1-(1-p)²)²

となる。

サーバ仮想化のホストサーバであるブレード1枚の可用性もpであるとすると,構成案1における経理システムの可用性はaであり,構成案2における経理システムの可用性はbである。ここで,予備のブレードで仮想サーバが起動するまでの時間については考えないものとする。

CPU使用率

各構成案のCPU使用率について,表1のCPU数と平均CPU使用率を基に算出した結果を表4に示す。どちらの構成案でもCPUは十分に余裕があり,性能は低下しないと言える。

表4 平均CPU使用率
物理サーバ 構成案1の平均CPU使用率 構成案2の平均CPU使用率
ブレード1 32.5% 27.5%
ブレード2 c% 20.0%
ブレード3 0.0% 12.5%

メモリ使用量

今回採用するサーバ仮想化の技術には,メモリオーバコミット機能があり,物理サーバに搭載されているメモリ容量を超えて仮想サーバにメモリを割り当てることが可能である。しかし,メモリ使用量が搭載量を超えると性能が低下するので,超えないようにしたい。

各構成案の通常時のメモリ使用量について,表1のメモリ容量と平均メモリ使用率を基に算出した結果を表5に示す。どちらの構成案でもメモリは足りており,性能は低下しないと言える。なお,仮想化によるメモリ使用量の増加はないものとする。

表5 平均メモリ使用量
物理サーバ 構成案1の平均メモリ使用量 構成案2の平均メモリ使用量
ブレード1 3.6Gバイト 2.4Gバイト
ブレード2 3.6Gバイト 2.4Gバイト
ブレード3 0.0Gバイト 2.4Gバイト
出典:平成23年度 秋期 応用情報技術者試験 午後Ⅰ 問4