応用情報技術者試験 過去問 2011年(平成23年) 秋期 午後 問1

家電量販店の営業戦略の策定

E社は,全国展開している家電量販店であり,PC,生活家電,AV機器,カメラ,ゲーム関連機器などの商品を扱っている。E社では,一人一人の客のニーズに応える豊富な品ぞろえと良質な接客を企業方針としている。

E社は,首都圏のX駅前にも複数の店舗を構え,X駅周辺の人口増加に伴い,これらの店舗の売上を順調に伸ばしてきた。

X駅前は再開発を終え,既存ビルのテナントスペースにも空きがなく,これ以上の新規出店や店舗拡張の余地はない。そのような中,X駅前の最後の一画を購入していた競合のF社が,家電量販店を出店する計画を発表した。F社が出店すれば,X駅前での競争が激化する。しかし,X駅前に魅力ある店舗が増えることで,他地区から来店する客が増えることも予想されるので,E社の戦略室は,戦略次第ではピンチをチャンスに変えることができると考えている。E社の戦略室のG課長は,H君に,F社の出店に対抗するE社の採るべき営業戦略を検討するように指示した。

価格戦略

H君は,X駅前へのF社の出店に合わせて,E社が採るべき価格戦略について検討した。

E社とF社のそれぞれが,現行の価格に対して価格据置と10%値下げのいずれかの戦略を採ったときに,両社の利得がどうなるかをシミュレーションによって求め,その結果を表1の利得表にまとめた。

表1 利得表
F社の価格戦略
価格据置 値下げ
E社の価格戦略 価格据置 ① 5億円,3億円 ② 4億円,5億円
値下げ ③ 6億円,2億円 ④ 3億円,4億円
注記:左:E社の利得,右:F社の利得

E社にとっては,aの順で利得が大きく,F社にとっては,bの順で利得が大きい。一方で,相手がそれぞれ,どの戦略を採るかを考えてみると,F社は,E社がどのような戦略を採ろうと,cの戦略を採った方がよい。E社は,F社の戦略に応じて採るべき戦略が変わってくる。しかし,F社が採るであろう戦略を前提に考えると,dの戦略を採った方がよい。したがって,両社の戦略の組合せは,利得表のe欄となることが考えられる。

値下げが繰り返されたときの対応

価格戦略の検討とは別に,値下げが繰り返されたときの対応も検討した。もしも値下げが繰り返されると,価格が下落し,最終的には利益がなくなってしまい,両社にとって好ましくない状況に陥ってしまう。これを避けるために,H君は,次の対策1~8を考えた。

  1. 客が欲しい商品をすぐに見つけられる店舗レイアウトへの変更
  2. 客に魅力ある商品を知ってもらうための広告の充実
  3. 客の商品選びをサポートする店舗の説明要員の商品知識・接客スキルの向上
  4. 購入後のサポート強化のためのアフターサービスの充実
  5. 他社の価格がE社より低い場合に客の申告に応じて行う他社と同価格での販売
  6. メーカとの協力による客の欲しい商品を実現するオリジナル商品の開発
  7. 在庫コストを減らすための売れ筋商品に特化した品ぞろえ
  8. E社の得意としているPC専門店のX駅前への新規出店

①G課長は,これらの対策の中の,対策7と対策8については対象外とし,それ以外の対策について,更に詳細な検討をするように指示した。その際,特に,接客スキルの向上に力を入れることと併せて,リピータの獲得についても検討することを指示した。

接客スキルの向上

接客スキルの向上策として,客が商品を購入するまでの心理状態の推移を把握し,それに適した接客を行うことができるように,販売員の接客トレーニングを検討した。

具体的には,客が商品を購入するまでの心理状態が,"注意"→"興味"→"欲求"→"行動"の順で推移するというモデルに着目し,例えば"注意"の段階では,"広告などにひかれて店に入ってきた客が,販売員に気を使わず自分のペースで店内を見て回れるように気を配る。"といった,各段階の心理状態に適した接客トレーニングを立案した。

リピータの獲得

一般に,上位2割の客が利益の8割を占めると言われていることから,自社の利用度の高いリピータをできるだけ優遇して,リピータのE社への支持度合いや信頼度を高め,固定化を推し進めることにする。

これを実現するために,三つの指標を使用するRFM分析を行うことにした。

出典:平成23年度 秋期 応用情報技術者試験 午後問題 問1