応用情報技術者試験 過去問 2015年(平成27年) 春期 午後 問5
DHCPを利用したサーバの冗長化
P社は,社員100名の調査会社である。P社では,インターネットから様々な情報を収集し,業務で活用している。顧客との情報交換には,ISPのQ社が提供するWebメールサービスを利用している。Webの閲覧や電子メールの送受信などのインターネットの利用は,全てプロキシサーバ経由で行っている。
現在のP社のネットワーク構成を図1に示す。

部署1のPCはプロキシサーバ1を,部署2のPCはプロキシサーバ2を経由してインターネットを利用している。PCは,(ア)DHCPサーバから,自身のIPアドレスを含むネットワーク関連の構成情報(以下,構成情報という)を取得して自動設定している。ただし,使用するプロキシサーバと社内DNSサーバのIPアドレスは,あらかじめPCに設定されている。プロキシサーバ1,2は,優先DNSとして社内DNSサーバを,代替DNSとしてQ社のDNSサービスを利用している。
先般,プロキシサーバ1に障害が発生し,部署1で半日の間インターネットが利用できなくなり,業務が混乱した。この事態を重視した情報システム部のR課長は,ネットワーク担当のS君に,次の2点の要件を満たす対応策の検討を指示した。
- プロキシサーバとDHCPサーバを冗長構成にして,サーバ障害発生時のインターネット利用の中断を短時間に抑えられるようにすること。
- 費用をできるだけ抑えられる構成とすること。
冗長化方式の検討
S君は,PCの構成情報を自動設定するためのDHCPの仕組みに注目した。
同一サブネットに2台のDHCPサーバがあっても,PCによる自動設定は問題なく行われるので,DHCPサーバを2台導入して冗長化する。
PCは,使用するDNSサーバのIPアドレスをDHCPサーバから取得できる。そこで,DNSサーバとプロキシサーバを2台ずつ導入して,2台のDHCPサーバからそれぞれ異なるDNSサーバのIPアドレスを取得させるようにする。そして,2台のプロキシサーバに同じホスト名を付与し,それぞれのDNSサーバのAレコードに,プロキシサーバのホスト名に対して,異なるプロキシサーバのaを登録する。
この構成にすれば,どちらのDHCPサーバから取得した構成情報をPCが自動設定するかによって,使用するDNSサーバが変わる。そこで,PCのWebブラウザの設定情報の中に,プロキシサーバのbを登録すれば,PCが使用するプロキシサーバを変えることができる。
DHCPサーバによる構成情報の付与シーケンスを図2に示す。DHCPメッセージは,OSI基本参照モデル第4層のcプロトコルで送受信される。

S君はこのようなDHCPとDNSの仕組みを利用し,DHCPサーバ及びプロキシサーバの冗長化を実現することにした。
DHCPサーバとプロキシサーバの冗長化
PCでのインターネット利用の中断を避けるためには,PCがDHCPサーバから取得したIPアドレスをもつDNSサーバと,そのPCがDNSサーバで取得したIPアドレスをもつプロキシサーバが同時に稼働している必要がある。
S君はこの条件を基に,サーバ間の独立性が確保できるサーバ仮想化機構を利用した冗長化方式をまとめた。
サーバ仮想化機構を利用したサーバ構成を図3に示す。
図3の中の,ローカルDNSサーバ1,2は,図1の社内DNSサーバとは別に導入し,プロキシサーバ3,4の名前解決を行う。プロキシサーバ3,4には,図1のプロキシサーバ1,2と同様のDNSの設定を行う。プロキシサーバ1,2は不要になるので,それらのサーバが稼働するハードウェアを物理サーバ1,2として再利用する。

図3のサーバ構成を利用すると,PCは,一方の物理サーバに障害が発生しても,他方の物理サーバで稼働するDHCPサーバから取得した構成情報を設定して,その物理サーバで稼働するプロキシサーバ経由でインターネットを利用できる。サーバ仮想化後のネットワーク構成を図4に示す。

図4の構成でも,インターネット利用中に,PCが使用中のプロキシサーバが稼働する物理サーバに障害が発生したときは,PCのインターネット利用が中断してしまう。
しかし,PCを再起動してPCの構成情報を再設定すればインターネットの利用を再開できるので,中断は短時間に抑えられる。
S君は,検討結果をR課長に報告した。R課長がS君の検討結果を承認し,導入が進められることになった。