応用情報技術者試験 過去問 2015年(平成27年) 春期 午後 問4

キャンペーンサイトの構築

L社は、清涼飲料の製造販売を手掛ける中堅企業である。夏の新商品を宣伝するために、新商品の紹介やプレゼントの応募受付を行うキャンペーンサイト(以下、本システムという)を構築することになった。

システム基盤の選定

本システムは、7~9月の3か月間だけ公開する予定である。また、プレゼントの応募を受け付けることから、特定の日時に利用が集中すると見込まれる。これらの特性に対応できるシステム基盤として、仮想化技術を用いたM社のPaaS(Platform as a Service)を選定した。M社のPaaSが提供するサービスを表1に示す。

表1 M社のPaaSが提供するサービス
サービス名称 概要 サービス料金
Webサービス 10,000 MIPS相当のCPU処理能力をもつWebサーバ 1台、1時間当たり10円
データ転送は無料
APサービス 20,000 MIPS相当のCPU処理能力をもつアプリケーション(AP)サーバ 1台、1時間当たり20円
データ転送は無料
ロードバランササービス クライアントからのリクエストをWebサーバに均等に振り分けるサービス 無料
自動スケールサービス WebサーバやAPサーバのCPU負荷が80%を超えない範囲で最適な台数に増減させるサービス 無料
DBサービス 40,000 MIPS相当のCPU処理能力をもつデータベース(DB)サーバ、スケールアウトやスケールアップはできない。 1台、1時間当たり50円
データ転送量1Tバイト当たり1,000円
データ保存量1Gバイト当たり、1か月2,000円
ストレージサービス データ保存領域を提供するサービス データ転送量1Tバイト当たり20円
データ保存量1Tバイト当たり、1か月2,000円

注記 1時間、1か月、1Gバイト、1Tバイトなど各単位に満たないものは全て切り上げて料金を計算する。データ転送とは、他サービスとの間のネットワークを介したデータの送受信を指す。

システム構成の検討

本システムには、次の二つの機能がある。

  • 新商品紹介機能
    動画や写真、解説文などを用いて新商品を紹介する機能。
  • プレゼント応募受付機能
    新商品に貼り付けたプレゼント応募シールの裏に記載されたシリアル番号と応募者の情報を受け付ける機能。

まず、新商品紹介機能を実現するためのシステム構成について考える。この機能は、動画や写真などのコンテンツをWebブラウザへ配信する。そのために、コンテンツをストレージサービスに配置し、Webサーバを経由してWebブラウザへ配信する構成にする。

次に、プレゼント応募受付機能を実現するためのシステム構成について考える。この機能は、発行したシリアル番号の照合などを行い、受け付けた情報をDBサーバに保存する。DBサーバのデータを用いた動的なHTMLを配信するために、WebサーバとAPサーバを利用する。また、利用者の増減に対応するために、ロードバランササービス及び自動スケールサービスも併せて利用する。応募者の情報を暗号化する処理は、DBサーバ上にストアドプロシージャとして配置することを検討したが、①本システムの特性を考慮した結果、②APサーバ上の処理として実装することにした

PaaS利用料金の試算

各機能における1トランザクション当たりのシステムリソース消費量を表2に、ピークとなる9月の時間帯ごとのトランザクション数の見込みを表3に示す。

表2 1トランザクション当たりのシステムリソース消費量
サーバ名称 新商品紹介機能 プレゼント応募受付機能
Webサーバ CPU:80百万命令 CPU:40百万命令
APサーバ - CPU:80百万命令
DBサーバ - CPU:20百万命令
データ転送量:10kバイト
表3 9月の時間帯ごとのトランザクション数の見込み
時間帯 新商品紹介機能 プレゼント応募受付機能
18:00~22:00 800 TPS 500 TPS
それ以外 80 TPS 50 TPS

注記 TPS:1秒当たりのトランザクション数(Transactions Per Second)

必要となるWebサーバの台数を時間帯ごとに試算する。

Webサーバに求められる18:00~22:00の時間帯の1秒当たりの命令実行数は、二つの機能を合計するとa百万である。Webサーバ1台の能力の80%がトランザクション処理に使用できるとすると、Webサーバ1台について、トランザクション処理に使用できる1秒当たりの命令実行数はb百万である。したがって、必要なWebサーバの台数はc台である。

同様に、その他のサーバの台数も求めることができる。

続いて、各サービスの利用料金を試算する。

WebサーバおよびAPサーバの料金は、求めた台数に利用時間と1時間当たりの料金を掛けることで算出できる。DBサーバは、それに加えてデータ保存量とデータ転送量に対する料金が必要になる。DBサーバの9月のデータ転送量は、1,000kバイト=1Mバイト、1,000Mバイト=1Gバイト、1,000Gバイト=1Tバイトとすると、dTバイトである。したがって、このデータ転送に掛かる料金はe円となる。

システム運用開始後の問題と対策

予定どおり本システムの運用が始まり、利用者が次第に増えてきた7月下旬、新商品紹介機能の応答が遅いというクレームが多く寄せられた。各サーバのアクセスログを解析したところ、ストレージサービスからWebサーバへのコンテンツの転送に想定以上の時間を要していることが判明した。そこで、システム構成を見直し、同じコンテンツが複数回利用される場合にはストレージサービスからの転送量を削減するよう③コンテンツの配信方法を変更することで、問題を回避できた。

出典:平成27年度 春期 応用情報技術者試験 午後