2016年 秋期 応用情報技術者試験 問7
腕時計型脈拍計の設計に関する次の記述を読んで、設問1〜3に答えよ。
M社は電子計測機器メーカであり、このたび単機能の腕時計型脈拍計(以下、脈拍計という)を開発することになった。この脈拍計は、LEDとセンサを手首に密着させて、長時間脈拍数を計測・記録するというものである。
【脈拍数の計測】
手首など、体表近くに動脈が存在する部位では、皮膚に照射した光の反射量が脈拍に同期して変化することが知られている。脈拍計はこれを利用して光学的に脈拍を検出する。
・光源となるLEDと、入射光の光量に比例した出力が得られる光センサ(以下、センサという)から成る計測ヘッドを手首に密着させ、一定周期でLEDを点滅させて皮膚に光を照射する。
・LED点灯時のセンサの入射光を測定する。この入射光には、皮膚からの反射光に、計測ヘッドと手首の隙間から入り込む室内光、太陽光などの外乱光が重畳している。
・LED消灯時にもセンサの入射光を測定する。LED消灯時及び点灯時の測定値を用いて外乱光の影響を除いたものを、反射光の測定値とする。
【脈拍数計測の方法】
1分間に1回、脈拍数を計測して記録する。
・1回の脈拍数計測は6秒間で行い、終了後はLEDを消灯する。
・6秒間の反射光の測定値の変化を解析し、1分間の脈拍数を算出して記録する。
・皮膚の状態などによって反射光の光量が変化する。そのため、脈拍数計測に先立ってLEDの輝度補正を行い、反射光の測定値があらかじめ想定した範囲(以下、適正範囲という)内であることを確認してから脈拍数計測を開始する。ここで、脈拍数計測の時間に輝度補正の時間が加わっても、1回の計測に要する時間は1分以内に収まるものとする。
【脈拍計のシステム構成要素】
脈拍計のシステム構成要素を表1に示す。脈拍計は、制御部及び測定部から構成される。
システム構成要素 | 機能 |
---|---|
制御部 | ・測定部にコマンドを送信し、測定部を制御する。 ・測定部から測定値を受信する。 ・LEDの輝度補正を行い、測定値を解析し、脈拍数を算出して記録する。 |
測定部 | ・LEDとセンサを制御する。 ・制御部からのコマンドに従って、センサで反射光を測定し、測定値を制御部に送信する。 |
【コマンド】
制御部から測定部に送られるコマンドの一覧を表2に示す。
コマンド | 内容 |
---|---|
点灯時間設定 | 点滅している間における、LEDが1回点灯する時間(ミリ秒)を設定する。 |
消灯時間設定 | 点滅している間における、LEDが1回消灯する時間(ミリ秒)を設定する。 |
輝度設定 | LEDの輝度を設定する。値が大きいほど輝度は高い。 |
計測開始 | 輝度補正及び脈拍数計測を開始する。 |
計測終了 | 輝度補正及び脈拍数計測を終了する。 |
【コマンド及びタイミング】
図1に計測時のタイミングを示す。
<figure>
<div style="text-align: center; font-family: monospace;">
<div style="margin-bottom: 10px;">
<span style="border: 1px solid; padding: 2px;">点灯</span>
<span style="border: 1px solid; padding: 2px;">消灯</span>
</div>
<div style="border: 1px solid; display: inline-block; padding: 10px;">
<div style="display: flex; align-items: center; margin-bottom: 5px;">
<span style="width: 100px;">輝度補正及び脈拍数計測</span>
<span style="margin-left: 20px;">60秒</span>
</div>
<div style="display: flex; justify-content: space-between; margin-top: 10px;">
<span>計測開始コマンド</span>
<span>計測終了コマンド</span>
<span>計測開始コマンド</span>
</div>
</div>
<div style="margin-top: 10px;">時間 →</div>
</div>
<figcaption>図1 計測時のタイミング</figcaption>
</figure>
(1) 制御部は、あらかじめ点灯時間設定、消灯時間設定及び輝度設定の各コマンドを送信する。
(2) 制御部の動作モードには、輝度補正モードと脈拍数計測モードの二つがある。
(3) 制御部は1分ごとに計測開始コマンドを送信する。計測開始コマンドの送信直後には輝度補正モードになる。
(4) 測定部は、計測開始コマンドを受信すると、点灯時間設定コマンドで設定された時間だけLEDを点灯し、消灯時間設定コマンドで設定された時間だけLEDを消灯する動作を計測終了するまで繰り返す。ここで、点滅の周波数は50Hzとし、点灯時間と消灯時間の比は6:4とする。
(5) 点灯時のLEDの輝度は、輝度設定コマンドで設定された値とする。
(6) 測定部は、LEDを点灯した後、センサの入射光を1回測定し、測定値xとして制御部に送信する。また、LEDを消灯した後、センサの入射光を1回測定し、測定値yとして制御部に送信する。
(7) 制御部は、続けて受信した測定値x、yから反射光の測定値zを算出し、そのときのモードに従って次の①、②のいずれかを行う。
① 輝度補正モードの場合は、zが適正範囲内であるかを判定し、範囲内であれば輝度補正モードを終了して脈拍数計測モードに移行する。範囲内でなければ適切な輝度を計算し、輝度設定コマンドを用いて次の点灯時までに輝度を補正する。所定の回数だけ輝度の補正を行ってもzが適正範囲内に収まらない場合は、脈拍数計測モードに移行せず、計測終了コマンドを送信して、その回の計測を終了する。
② 脈拍数計測モードの場合は、反射光の測定値zを用いて、脈拍数解析を行う。所定の回数だけ脈拍数解析を行ったら、解析データから脈拍数を算出して記録し、計測終了コマンドを送信してその回の計測を終了する。
(8) 測定部は、計測終了コマンドを受信すると、LEDの点滅及びセンサの入射光の測定を終了する。
【計測時における制御部の処理】
図2に計測時における制御部の処理を示す。
処理手順は次のとおりである。
(1) 制御部は、計測開始コマンドを送信する。
(2) 反射光測定では、測定部からLED点灯時の測定値x、LED消灯時の測定値yを受信し、外乱光の影響を除去した値zを算出する。
(3) zが適正範囲内であれば、輝度補正を終了して脈拍数計測に入る。zが適正範囲囲内になければ、適切な輝度を計算し、aする。
(4) 輝度補正は最大500回とし、500回繰り返してもzが適正範囲内になければ、輝度補正を終了し、bして終了する。
(5) 脈拍数解析を300回行った後、解析データから脈拍数を算出して記録し、bして終了する。