2016年 秋期 応用情報技術者試験 問2
コンビニエンスストアにおけるマーケティング戦略
X社は、コンビニエンスストア(以下、コンビニという)のフランチャイズチェーンを全国に展開する会社であり、業界では大手である。フランチャイズ店の数を増やしたり、POSシステムやポイントカードで集まる情報を有効活用したりして、売上を伸ばしてきた。しかし、最近では他社のコンビニの店舗数も増え、さらに、スーパーマーケット、ドラッグストア、ファーストフード店などとも競合するようになり、競争が一層激しくなってきている。従来は若者が顧客の中心であったが、高齢化が進み、中高年者の割合が増えてきているので、中高年者をいかにして取り込むかが、今後の売上を伸ばすポイントとなっている。
X社では、売上を伸ばすために、マーケティングに力を入れている。X社のマーケティング部のY君は、Z部長の下、マーケティング戦略策定を担当している。
[マーケティング戦略策定プロセス]
マーケティング部では、マーケティング戦略の4Pのフレームワーク、すなわち、製品戦略(Product)、価格戦略(Price)、流通戦略(Place)、及びプロモーション戦略(Promotion)を十分に検討した上で具体的な戦略を考えている。その際、売上を拡大する三つの方法、つまり、顧客数を増やす、a、及び購買頻度を上げる、のそれぞれの観点からも戦略を考えている。
[現行のマーケティング戦略]
4Pのフレームワークを使って整理した現行のマーケティング戦略は、次のとおりである。
(1) 製品戦略 ・おにぎり、おでん、弁当、飲料などの商品を"戦略商品"と位置付けている。戦略商品では、スーパーマーケットにはない規格の商品を企画したり、プライベートブランドの商品を開発したりして、差別化を図っている。
・X社のブランドで、おいしいコーヒーの提供を行っている。豆からひくことができるマシンを開発し、豆選びや煎り方などをはじめとして、味にとことんこだわった。一方で、コストを抑えられるように、顧客にレジでカップを渡し、顧客自身がコーヒーを入れるセルフサービス方式としている。このコーヒーは大きな成功を収め、"X社のブランドのコーヒーが飲みたい"という多くの顧客を創出した。
(2) 価格戦略 ・顧客は利便性に対しても価値を見出してくれるという考えから、スーパーマーケットなどとは異なる価格設定をしている。
・前述のコーヒーは、初期投資に多額の費用が掛かったが、①初期投資の早期回収よりも、高いマーケットシェアの獲得を優先させて、価格を設定した。
(3) 流通戦略 ・コンビニに来店する顧客の多くは、買いたい商品や受けたいサービスなど、目的が決まっているが、目に留まる商品をついでに買っていくことも多いので、顧客の購買目的となることが多い弁当類は、一番奥に陳列している。
・POSデータを活用し、店舗だけでなく配送センタの在庫も極力抑えた上で、店舗ごとに売れる商品を売れる時間に店頭に陳列できるように配送するシステムを使用している。商品ごとの発注量は、本部と店舗のそれぞれでシステムに入力したり、修正したりすることができる。
・その日の天候、本部のプロモーション企画、小中学校の運動会などの地域行事によって、売れる商品やその量が大きく変わる。本部では、過去のPOSデータをこれらの要因からも分析し、店舗ごとに商品別発注量を提示している。しかし、地域行事は年ごとに変更されることもあり、本部で把握している情報だけでは万全とはいえず、②店舗では、在庫不足で販売機会を喪失したり、在庫過多で弁当などの商品の廃棄が出たりすることがある。
・来店する顧客が昼休みの時間帯に集中するので、店舗の人員を増やして対応するようにしている。しかし一方で、来店する顧客が少ない時間帯もあり、一日の中で繁閑の波がある。
・利益は薄いが、③来店する顧客を増やすことによる他のメリットが期待できるので、映画やコンサートのチケットなどの予約もできる機器を店内に設置している。
(4) プロモーション戦略 ・X社では、商品の販売を促進するためだけでなく、企業イメージ向上のために、TVコマーシャルなどで、全世代をターゲットにした広告を出している。
[最近の検討]
X社のマーケティング部では、最近の市場環境の変化を踏まえ、改めて環境分析を行って、顧客市場をグループ分けした。その結果、中高年者の取込みを長期目標とし④取り込むべき顧客に、自社や自社製品に関してポジティブなイメージを植え付ける施策を行うことにした。
Y君は、その一環として、次のような施策の実施を検討している。
(1) カロリーや糖質を抑えた、健康に配慮した商品を多く採用する。
(2) 医薬品については、治療薬重視の品ぞろえから転換し、予防薬の品ぞろえを今まで以上に充実させる。
**(3) 高齢化に伴い、車の運転ができなくなったり、長い距離を歩けなくなったりして、コンビニに来たくても来ることができない高齢者が増えているという仮説を立てた。この仮説の下、店舗から近隣地域に宅配サービスを行う事業の検討を開始した。市場の規模は見込めるか、市場の成長性は高いか、収益性は高いか、法規制など社会的な環境要因に問題はないかを調査する予定である。また、X社の長期目標に沿っているかの分析の他に、⑤既存の人的リソースの活用という観点から、必要な内部環境の分析を行う予定である。
[Z部長の指摘]
Y君は、これらの[最近の検討]の内容をZ部長に説明したところ、Z部長から、長期目標を考慮して、プロモーション戦略についても見直すべきであると指摘された。