応用情報技術者試験 過去問 2015年(平成27年) 秋期 午後 問7

通信機能を内蔵したディジタル電力量計の設計

H社は計測器のメーカである。今回,通信機能を内蔵したディジタル電力量計(以下,電力量計という)を設計することになった。この電力量計は,計測したデータを電力会社のサーバ(以下,サーバという)に自動で送信する。

【電力量計の機能】

電力量計を用いた電力量計測システムの構成を,図1に示す。

電力量計を用いた電力量計測システムの構成
図1 電力量計を用いた電力量計測システムの構成

電力量計の機能は,次のとおりである。

  1. 電力量計は,一般家庭,工場などに設置され,電力量を計測し,記録する機能がある。また,内蔵した時計(以下,時計という)で時刻を計時する機能がある。内蔵バッテリを使用し,停電時にもこれらの機能を維持できる。
  2. 電力量計には通信機能があり,サーバと双方向通信ができる。通信は,携帯電話回線,インターネット,電力会社が敷設した専用線などのネットワークを使用して行う。
  3. 電力量計は,時刻補正サーバ又は検針員用の専用端末を利用し,時計を十分な精度で補正できる。
  4. 電力量計は,1秒ごとに1秒分の電力量を計測する。計測によって得られた電力量のデータには,年月日を含む秒単位の時刻情報(以下,タイムスタンプという)が付与される。このデータを1秒データといい,電力量計は最大70日分の1秒データを保持する。
  5. 電力量計は,毎時0分0秒から29分59秒までのタイムスタンプが付いた1秒データ,又は毎時30分0秒から59分59秒までのタイムスタンプが付いた1秒データ(以下,これらを電力量データという)をサーバに送信する。通常,電力量データは1,800個の1秒データから成るが,条件によっては1,800個とならないことがある。その場合,電力量計は電力量データ中の1秒データの個数が1,800個となるように補正する。
  6. 電力量計は,サーバに電力量データを送信するとき,電力量計の識別コード及びプログラムのバージョン番号を付与する。
  7. 検針員が出向いて検針し,データ収集することもできる。

【電力量計のハードウェア構成】

電力量計のハードウェア構成を表1に示す。この電力量計は計測部及び通信部から成る。

表1 電力量計のハードウェア構成
構成 機能など
計測部
  • ・MPU,RAM,フラッシュメモリ,A/Dコンバータ,リアルタイムクロック(以下,RTCという),内蔵バッテリなどから成る。
  • ・A/Dコンバータを用いて電圧及び電流を常時計測し,計測結果から電力量を求める。
  • ・RTCは常に時刻を計時している。RTCは1秒ごとに割込みを発生し,割込みごとにソフトウェアで1秒データを計測する。RTCの誤差は1日当たり±0.7秒である。
通信部
  • ・携帯電話回線,インターネット,電力会社が敷設した専用線などを使用し,サーバと通信を行う。
  • ・検針員用の専用端末と通信することができる近距離通信機能が内蔵されている。検針員が専用端末を電力量計にかざすと,近距離通信を用いて,時刻の補正と,専用端末から指示された1か月分の電力量データの取得ができる(このデータを使用して,サーバのデータベース上で欠落した電力量データを補うことができる)。

【サーバの機能】

  1. 電力量データの収集
    • サーバから電力量計に対して,指定した時間帯の電力量データの通知要求を送る。
    • サーバは,電力量計から送られてきた電力量計の識別コード,プログラムのバージョン番号を確認し,電力量データとともにデータベースに格納する。
  2. 検針員による検針の指示
    • サーバは,月初めのバッチ処理で,データベース上で電力量データに欠落がある電力量計一覧を出力する。検針員は電力量計一覧に従って検針し,データを収集する。

【計測部のA/Dコンバータ】

計測部は,電圧と電流を計測して電力を求める。このうち,電圧値を計測するA/Dコンバータは,最下位ビットが1/2,048ボルトの重みであり,負の値を2の補数表現として-1,024ボルト~1,024-(1/2,048)ボルトの範囲の電圧を計測できる。このA/Dコンバータに必要な最小のビット数は,aビットである。

【電力量計のタスクの主な処理】

電力量計のプログラムは,通信制御タスク及び管理タスクから成る。電力量計のタスクの主な処理は表2のとおりである。

表2 電力量計のタスクの主な処理
タスク 処理
通信制御タスク
  • サーバから電力量データの通知要求を受け取ると,指定された時間帯の電力量データを管理タスクのバッファから取り出し,電力量データ中の1秒データに過不足があるときは補正を行う。サーバには,電力量データ,b及びcを送る。
  • 管理タスクから時刻補正要求を受け取り,ネットワークを使用した時刻補正を行う。
  • 検針員の専用端末と近距離通信で接続したとき,専用端末から指示された1か月分のデータを専用端末に送り,専用端末を利用した時刻補正を行う。
管理タスク
  • RTCの割込みによって起動され,1秒データを作成し,バッファに格納する。
  • 時刻の誤差が±0.5秒を超えないように,一定周期で通信制御タスクに時刻補正要求を送る。
平成27年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問7