応用情報技術者試験 過去問 2014年(平成26年) 春期 午後 問2

販売戦略

L 社は、全国各地の店舗で、輸入雑貨と北欧風デザインの輸入家具を、40~50 歳代の個人をターゲット顧客として販売している。家具のデザインは、数年にわたって洗練を重ねてきているもの、近年、雑貨、家具とも売上が徐々に減少してきている。

まず、売上の 60%を占める輸入雑貨について、過去 3 年間分の売上状況を、商品を購入した直近の年度ごとに分析し、集計した。商品を購入した直近の時期が、1 年以内の顧客への売上額が 70%、1 年超 2 年以内の顧客への売上額が 20%、2 年超の顧客への売上額が 10%であった。また、1 年以内に商品を購入している顧客は、他の顧客と比べ、来店回数と商品の購入額が多い傾向であった。L 社では、2 年前から、住所・氏名を入手できた全ての顧客へ、通常のカタログを四半期ごとに送付するプロモーションを続けているが、会社の幹部は、プロモーションの費用対効果をもっと改善するよう求めている。

そこで、売上の増加を図るために、商品企画部の M 課長は、RFM 分析によって既存顧客をランク分けして、プロモーションの総費用を増やさずに、適切なプロモーション施策を策定するよう N さんに指示した。

RFM 分析に基づいた輸入雑貨のプロモーション施策の策定

N さんは、過去 3 年間の輸入雑貨の販売実績データについて、RFM 分析を行うことにし、表 1 のように R、F、M をそれぞれ 5 段階で評価した。

表 1 RFM の 5 段階評価
R F M 点数
6 か月以内 8 回以上 20 万円以上 5
6 か月超 12 か月以内 6~7 回 10 万円以上 20 万円未満 4
12 か月超 18 か月以内 4~5 回 5 万円以上 10 万円未満 3
18 か月超 24 か月以内 2~3 回 3 万円以上 5 万円未満 2
24 か月超 1 回 3 万円未満 1

そして、R、F、M の点数のうち、①R は 2 倍の重み付けとして、顧客ごとに R、F、M のそれぞれの点数を合計した総合点を算定した。総合点に基づいて、表 2 のように②顧客をランク分けし、それぞれの顧客ランクごとのプロモーション施策を実施することにした。

表 2 顧客ランクごとのプロモーション施策
総合点 顧客ランク プロモーション施策
18~20 点 A 優良顧客と考えられるので、通常のカタログに加え、特別優待用の豪華なカタログを送る。
15~17 点 B 将来、優良顧客になってくれる可能性があるので、通常のカタログに加え、割引券付きの良質なカタログを送る。
11~14 点 C 普通の顧客と考えられるので、通常のカタログだけを送る。
6~10 点 D あまり良い顧客ではないと考えられるので、プロモーションのaするために、カタログの送付をやめ、葉書を送る。
4~5 点 E 輸入雑貨を購入するニーズが無いか、顧客がb確率が高いので、プロモーションのaするために、カタログの送付をやめる。

新たな商品戦略の策定

RFM 分析に基づいたプロモーション施策を進めてから 6 か月後、M 課長が、売上の推移を分析したところ、売上額は若干の増加にとどまっていた。M 課長は、更なる販売拡大のためには、輸入雑貨のプロモーション施策だけでなく、新たな輸入家具を市場投入して、新たな顧客層を開拓することが必要と判断した。そこで、次の(1)~(6)の手順で、新たな輸入家具に関する市場調査を行い、その分析結果を踏まえて商品戦略を策定するよう、N さんに指示した。

  1. 仮説の設定

    N さんは、新たな輸入家具の商品企画を立案するために、商品企画部門と商品販売部門の責任者に、新たな顧客層の想定と、その顧客層の潜在ニーズについてヒアリングを行った。そのヒアリングの分析結果に基づいて、少数の顧客に電話でヒアリングする予備調査を行い、新たな輸入家具について、(a)~(d)の仮説を設定した。

    1. デザイン:イタリア風
    2. 顧客が受容できる価格帯:30~40 万円
    3. ターゲットとなる顧客層:
      • 年齢層:30~39 歳
      • 年収:500~700 万円
    4. ターゲット顧客への訴求方法:雑誌でのパブリシティ
  2. 市場調査の設計と実施

    N さんは、新たな輸入家具に関する、仮説の検証、購入する意向の把握、及び販売チャネルの見直しを目的として、(a)~(d)の手順で、市場調査を設計し、実施した。

    1. 市場調査の対象とする母集団は、20~59 歳の全国の男女とした。
    2. 母集団に属する被調査者をランダムに抽出した上で、郵送によるアンケート調査を実施することにした。
    3. L 社が以前に作成した市場調査報告書及び社内検討会の議事録から、キーワードを抽出して分類し、新たな輸入家具のイメージを提示した上で、被調査者に回答してもらうよう、アンケート項目を策定した。
    4. アンケート調査で得られる、商品を新たに購入したいと考える人の割合(以下、購入意向率という)は、必ずしも真の値ではなく、誤差が含まれることを考慮し、cを 95%として、有効回答数を次の式によって算出した。

      購入意向率 p を 40%、誤差率 r が±4%以内という条件とすると、有効回答数 q は 600 となった。

      過去に L 社が行った類似のアンケート調査において、アンケート回収率が 75%、有効回答率が 80%であったことから、被調査者数は、d人とした。

  3. 市場調査結果の整理と分析

    1 か月後、市場調査が終了し、N さんは、市場調査結果を(a)~(d)のとおり整理し、分析した。

    1. 新たな輸入家具の購入意向と販売チャネルに関する調査結果

      新たな輸入家具の購入意向

      • 是非購入したい:5%、購入したい:12%

      新たな輸入家具の購入意向を有する人の購入予定時期

      • 6 か月以内:10%、6 か月超 1 年以内:20%、1 年超 2 年以内:20%、2 年超:50%

      新たな輸入家具の購入意向を有する人が希望する販売チャネル(複数回答)

      • 電話:10%、店舗:30%、インターネット:70%
    2. クロス集計結果

      購入意向者の年収と年齢層という属性別に新たな輸入家具の購入意向をクロス集計した結果、年齢層が 30~39 歳で、年収が 300~500 万円のセグメントでの顧客層の購入意向は、他のセグメントより高く、セグメント間の差の検定結果も有意であった。

    3. 年代別の分析結果(抜粋)
      • 20~29 歳では、アメリカ風デザインの輸入家具の人気が高い。
      • 30~49 歳では、イタリア風デザインの輸入家具の人気が高い。
      • 50~59 歳では、フランス風デザインの輸入家具の人気が高い。
      • 20~39 歳では、インターネットで商品情報を入手する機会が増加している。
      • 20~49 歳では、商品を購入した、自分の親しい人の意見を参考にして、同じような商品を購入したいと考える傾向が強い。
    4. 価格感度測定の結果

      年齢層が 30~39 歳の、価格に対する意向を価格感度測定の手法で分析した結果は、図 1 のとおりであった。

    価格感度測定の手法で分析した結果
    図1 価格感度測定の手法で分析した結果
  4. 仮説の修正

    N さんは、市場調査結果を反映して、(a)~(d)のように仮説を修正した。

    1. デザイン:e
    2. 顧客が受容できる価格帯:fg万円
    3. ターゲットとなる顧客層
      • 年齢層:30~39 歳
      • 年収:300~500 万円
    4. ターゲット顧客への訴求方法:③SNS を活用
  5. 需要予測

    市場調査結果から、1~5 年目までの需要率を算定した後、ターゲットとなる顧客層の需要数を予測した。

  6. 販売価格と販売チャネルの決定

    N さんは、新たに市場投入する輸入家具は原価 20 万円で、人気の高いデザインの商品であり、hである 25 万円を販売価格とすることが妥当と考えた。また販売チャネルについては、店舗販売に加えて、インターネットで販売することが適切と判断し、企画書を M 課長へ提出して承認を得た。

出典:平成26年度 春期 応用情報技術者試験 午後問題 問2