2013年 春期 応用情報技術者試験 問7
ワイヤレス充電ステーション
G社は、携帯機器用のワイヤレス充電ステーション(以下、ステーションという)で稼働する組込みソフトウェアを開発している。
ワイヤレス充電とは、コネクタなどを介さずに充電する機能である。G社が開発しているのは、ステーションに内蔵された送電コイルに電流を流すことによって、携帯機器に内蔵された受電コイルに電流が発生し、携帯機器が充電されるというものである。
【ステーションの概要】
ステーションの主要部分は、送電コイルに流す電流を制御する送電回路部と、携帯機器との通信を行う近距離無線通信部である。近距離無線通信部は、充電テーブル上に携帯機器が置かれているかどうかを調べ、携帯機器が置かれている場合は、その充電状況を確認する。一度に充電できる携帯機器は1台である。
ステーションの外観を図1に、ステーションの動作状態と、各状態に応じて表示部に表示される内容を表1に示す。
動作状態 | 表示内容 | 動作状態の説明 |
---|---|---|
待機状態 | "STANDBY" | 充電テーブル上に携帯機器が置かれるまで待機している状態である。定期的に携帯機器との通信を試みる。 |
充電動作状態 | 残り充電時間1) | 携帯機器を充電している状態である。定期的に携帯機器と通信を行い、充電状況を確認する。 |
充電停止状態 | "FULL" | 充電テーブル上に置かれた携帯機器が満充電となり、充電を停止している状態である。定期的に携帯機器と通信を行う。 |
異常検出状態 | "ERROR" | 異常発熱、充電効率の低下などの異常を検出し、充電動作を停止している状態である。 |
【携帯機器との通信】
待機状態では、充電テーブル上に携帯機器が置かれているかどうかを調べるために、近距離無線通信部で携帯機器との通信を約1秒周期で試みる。通信に成功すると、携帯機器の情報を取得して、ステーション内のRAMに携帯機器情報として記録する。
携帯機器情報の構成項目を表2に示す。
構成項目名 | 説明 |
---|---|
機器ID | 携帯機器を一意に識別することができるIDである。充電テーブル上の携帯機器が認識できない場合は、ゼロが設定される。 |
ステータス | 携帯機器が満充電か否かを示す。 |
電池残量割合 | 携帯機器の電池残量を、満充電時を100%とした場合の割合で示す。 |
受電電力 | 携帯機器が受電している電力をミリW単位で示す。 |
【残り充電時間の表示】
充電動作状態では、携帯機器情報の電池残量割合の推移から、満充電になるまでの概算残り充電時間を表示部に表示する。残り充電時間は、携帯機器の電池残量の増分が充電時間に比例するとして算出する。推移情報が不十分で残り充電時間を算出できない場合は"--:--"を表示する。
【ステーションの組込みソフトウェア】
開発する組込みソフトウェアのタスク一覧を、表3に示す。
タスク名 | 処理概要 | 優先度 |
---|---|---|
メイン | ステーションの動作全体を制御する。 | a |
通信 | 携帯機器との近距離無線通信を試みる。その結果を携帯機器情報としてRAMに記録し、終了する。 | 3 |
安全監視 | 500ミリ秒ごとに起動し、充電テーブルに取り付けたcセンサの値を読み込む。その結果、充電テーブルの異常発熱を検知した場合は、異常検出状態タスクを起動する。 | b |
異常検出状態 | d関数を呼び出した後に、表示部に"ERROR"を表示し、無限ループに入る。 | 1 |
タスクの優先度は1~4の4段階で、値が小さいほど優先度が高い。また、それぞれのタスクは異なる優先度をもつ。主電源スイッチを入れると、メインタスクと安全監視タスクが起動される。
組込みソフトウェアで使用する送電制御関数を、表4に示す。
関数名 | 処理概要 |
---|---|
Start_Power | 送電回路に電流を流し、送電を開始する。 |
Stop_Power | 送電回路の電流を遮断し、送電を停止する。 |
Get_Watt | 送電回路で送電している電力値をミリW単位で算出し、戻り値として返す。 |
メインタスク処理の流れ図を図2に示す。
【安全設計】
充電テーブル上に携帯機器の他に金属異物があると、金属異物に電流が流れて熱を帯び、発火などの危険性がある。異常発熱の検出は安全監視タスクが行うが、充電テーブル上に金属異物があっても、充電テーブルと接していない場合は発熱を検出できない。そこで、図2中の②異常検出において、送電効率が規定値より低い状態が規定時間以上続いた場合も、異常として検出することにする。送電効率は、次の式で算出する。
送電効率(%) = 受電電力÷送電電力×100