2013年 春期 応用情報技術者試験 問10

EVM(Earned Value Management)を用いたプロジェクト管理

システムインテグレータのP社は,機械製造業Q社から,Q社工場の生産管理システム開発プロジェクト(以下,本プロジェクトという)を受注した。本プロジェクトのプロジェクトマネージャに,P社のR氏が任命された。

【EVMを用いた進捗管理】

P社は,計画したスケジュールやコストどおりにプロジェクトを進めるために,要件定義以降のフェーズにおけるプロジェクトの進捗管理にEVMを採用することを社内ルールで定めている。

R氏は,本プロジェクトのWBSを作成した。EVMを用いたプロジェクト管理には,精度の高いWBSを作成することが重要である。またWBSでは各タスクのa関係が分かりにくいので,アローダイアグラムも作成した。

P社では,プロジェクト全体のSPI(Schedule Performance Index:スケジュール効率指数)とCPI(Cost Performance Index:コスト効率指数)を週次で求めて進捗を管理する。SPIまたはCPIが0.90を下回ったとき,プロジェクトに何か問題が生じていると判断して,原因の調査及び対策の検討に着手することを社内ルールで定めている。

表1 開始後4週間の本プロジェクト全体のEVM表
指標単位 千円
4月5日4月12日4月19日4月26日
PV(Planned Value)3,5007,00010,50014,000
EV(Earned Value)3,3506,2008,55010,400
AC(Actual Cost)3,0006,0009,00012,000

基本設計フェーズは,業務ロジックチーム,データベースチーム,ユーザインタフェースチームの三つに分かれて作業を進めている。

【各チームへのヒアリング】

図1は,基本設計フェーズ開始後4週間の各チームのEVMグラフである。4月26日時点の図1の状況について各チームのチームリーダにヒアリングした結果は次のとおりであった。

千円単位で表示、グラフには各チームのPV、EV、ACの推移が4月5日から4月26日まで週次で表示されている。

業務ロジックチーム:

Webシステム開発要員の確保が不十分なので,計画よりも少ない要員で設計を進めており,スケジュールは遅れている。生産性はe

データベースチーム:

データベースの設計を順調に進めている。スキルの高い要員が割り当てられていることと,既存の設計書をかなり活用できているので,スケジュールは進んでいる。生産性は当初の想定よりも高い。

ユーザインタフェースチーム:

設計を終え,利用者にレビューを依頼しているが,多忙なため,設計書を用いた紙面の説明だけでは見た目や操作性の十分な理解が進まず,いまだに利用者の合意が得られていない。設計の承認が得られないので,予定どおりに配置している要員が待ち状態となっており,スケジュールは遅れている。

【対策の検討】

ヒアリングの結果,設計の未承認や要員の確保不十分を原因とするプロジェクト推進上の問題が発生していることが分かった。

ユーザインタフェースチームの設計承認について,レビューで十分な理解を得るために,fを早急に作成し,設計書と合わせて説明するよう,R氏はユーザインタフェースチームに指示した。

R氏は,業務ロジックチームの遅れをばん回し,予定完了日までに設計を完了させるために,必要な要員の確保を最優先で行うことにした。その際,①新規メンバの投入が既存メンバの生産性に影響を及ぼすことを考慮し,既存メンバの効率を維持するための配慮も併せて行った。

出典:平成25年度 春期 応用情報技術者試験 午後 問10