2010年 秋期 応用情報技術者試験 問9

検疫ネットワーク

W 社は,食品の製造と販売を営む中堅の会社である。W 社には営業部と製造部があり,それぞれの部の各社員にノート PC(以下,PC という)が 1 台ずつ配布されている。社員は,配布された PC を W 社社内ネットワーク(以下,社内ネットワークという)に接続して利用している。社内ネットワークでは,情報セキュリティ強化のための施策の一環として,IEEE 802.1x 方式による認証 VLAN を用いた検疫ネットワークシステム(以下,検疫システムという)を導入している。

検疫システムは,セキュリティ対策の検査を行い,セキュリティ対策が不十分な端末を社内ネットワークに接続させず,隔離したり,必要なセキュリティ対策を施したりする機能をもつ。

社内ネットワークの構成は,図のとおりである。各種サーバ,レイヤ 2 スイッチ(L2SW),レイヤ 3 スイッチ(L3SW),ファイアウォール(FW),ルータなどから構成される。設定された VLAN 一覧を表 1 に,サーバ一覧を表 2 に,ディレクトリサーバ上に格納されているユーザ情報(一部)を表 3 にそれぞれ示す。

表1 VLAN一覧
VLAN ID用途
VLAN 0検疫用
VLAN 10共通サーバ用
VLAN 20営業部用
VLAN 30製造部用
VLAN 40インターネット接続用
VLAN 50未使用(予備)
表2 サーバ一覧
サーバ名所属 VLAN
検疫サーバVLAN 0
ウイルス対策サーバVLAN 0
DHCP サーバVLAN 10
RADIUS サーバVLAN 10
ディレクトリサーバVLAN 10
営業部サーバVLAN 20
製造部サーバVLAN 30
表3 ユーザ情報(一部)
ユーザ名パスワード所属 VLAN
AAA********VLAN 20
BBB********VLAN 20
CCC********VLAN 30
DDD********VLAN 30
EEE********VLAN 30
注:網掛けの部分は表示していない。

【認証と検疫の処理の流れ】

(1) 所属 VLAN が設定されていない営業部エリアや製造部エリアの PC は,それぞれのエリア内の L2SW の空きポートに接続されると,L2SW や L3SW を介して,aサーバと限定的に通信し,端末認証を受ける。

PC から送られたユーザ名などの認証情報をaサーバが受信すると,aサーバは,ユーザ情報をbサーバに問い合わせ,ユーザ認証を行う。

ユーザ認証がcした PC は,引き続き,VLAN が設定されないままとなる。

(2) ユーザ認証がdした PC の所属 VLAN を,検疫エリアに配置されたサーバと同じくeに設定して,その PC を隔離する。ここでは,所属 VLAN は,L2SW のポートごとに一つだけ設定される。

(3) PC では,検疫サーバによって,セキュリティパッチが適用されているかどうか,ウイルスワクチンのパターンファイルが最新かどうか,スクリーンセーバなどの各種設定状況が適切かどうかを調べる検査が行われる。この検査が不合格となった PC は,検査が合格となるまで,このeに隔離され,検疫サーバによって,必要なセキュリティパッチの適用や各種設定の変更が強制的に行われる。さらにウイルス対策サーバによって,ウイルスチェックが行われる。

(4) 検査が合格となった PC は,bサーバに登録された所属 VLAN ID に従い,検疫システムによって,所属する VLAN が割り当てられる。

例えば,ユーザ名が CCC の場合,fサーバと同じ VLAN であるgが割り当てられる。

(5) 所属する VLAN を割り当てられた PC が,hサーバに IP アドレスを要求すると,hサーバは,VLAN ID に応じた IP アドレスを動的に割り当てる。

IP アドレスが割り当てられた PC は,社内ネットワークを利用することができる。

出典:平成22年度 秋期 応用情報技術者試験 午後