2010年 秋期 応用情報技術者試験 問5

ネットワーク障害の原因と対策

M社は、プロジェクトルームに無線LANを導入することにした。また、老朽化が進んでいた機器の交換も同時に実施した。

この際、事務室のPCから利用しているグループウェアを、プロジェクトルームからも無線LAN経由で利用できるようにした。このグループウェアは、M社の関連会社が開発したもので、通信には、独自に割り当てたTCPポートを使用している。グループウェアサーバは関連会社に設置してあり、運用も関連会社が行っている。グループウェアの通信には、ファイアウォール(以下、FWという)のVPN機能を使用している。

【ネットワーク構成】

注:網掛けの部分は、交換した機器を示す。

【無線LAN】

無線LANは、理論上の伝送速度が最高aMビット/秒になるIEEE 802.11gを採用した。同じ周波数帯の規格にbがあるが、伝送速度が不十分であった。また、理論上の伝送速度が同じ規格にcもあるが、関連会社で導入実績のあるIEEE 802.11gを選択した。

IEEE 802.11gでは、2.4GHz帯に中心周波数を5MHz刻みにして、13個の無線チャネルを割り当てている。図2に各チャネルが使用する周波数帯域の割当てを示す。1個のチャネルの周波数幅は22MHzであり、互いに干渉しない独立した周波数帯域で利用できるチャネルは最大3個である。そのチャネルの組合せには"1, 6, 11"、"2, 7, 12"、"3, 8, 13"などがある。プロジェクトルームのAP1~AP3には、電波干渉が発生しないようにそれぞれ異なるチャネルを設定する。

【グループウェアサーバの接続不良】

機器の交換を終了した直後から、事務室のPCからグループウェアサーバへの接続ができなくなった。

事務室のPCからの関連会社のWebサイトの閲覧、関連会社からのM社のWebサイトの閲覧、事務室のPCと関連会社との間のメール送受信は可能であった。グループウェアサーバのホスト名を指定して、事務室のPCからpingコマンドを実行した結果も正常だった。また、関連会社では、グループウェアへの接続は問題なく、利用できていた。

原因は、交換した機器の①設定ミスと分かり、設定を修正した。

【無線LANの伝送速度低下】

無線LANの運用を開始したところ、ノートPCの使用中に時々データ転送が遅くなるという障害が発生した。

すべてのノートPCについて、APとの接続のための設定、電波強度を調査したが、問題は見当たらなかった。

次に、周辺で稼働中のAPの情報を収集する装置を使用して、プロジェクトルーム内で調査したところ、窓側のエリアで、②電波干渉の原因と考えられるM社外のAPを1台検出した。

調査の結果、電波干渉はこの"M社外のAP"とAP1との間で発生していることが判明した。

さらに、電波干渉が発生するチャネルを調査するために、AP2及びAP3の電源をオフにして、AP1のチャネルを1~13まで順番に変更し、電波干渉の有無を調べた。チャネルが1~6のときには電波干渉は発生しなかったが、チャネルが7~13のときには電波干渉が発生した。

AP2とAP3についても同様の調査を行ったところ、いずれのチャネルを設定しても電波干渉は発生しなかった。

調査結果から原因を究明して、③APのチャネル設定を変更した。

グループウェアサーバの接続不良と無線LANの伝送速度低下の対策後、M社のネットワークは順調に稼働した。

出典:平成22年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問5