2014年 秋期 応用情報技術者試験 問11
受注・売上計上プロセスに関連するシステムの監査に関する次の記述を読んで、設問1, 2に答えよ。
S 社は、住宅関連の広告を掲載するポータルサイトを運営している。具体的には、住宅リフォーム、インテリア設計・施工などを行っている企業に対して、S 社が運営するポータルサイトに広告を掲載するサービスを提供している。
S 社は現在、株式公開に向けて準備を進めている。その一環として内部監査部では、売上の会計処理の正確性、信頼性を確認するために、受注・売上計上プロセスに関連するシステムの監査を実施することにした。監査対象とした受注・売上計上プロセスに関連するシステムの概要は、図1のとおりである。監査チームにはT氏をリーダとして3名が参加することになった。
【受注・売上計上プロセスの概要】
1. 受注処理
(1) 営業担当者は、受注すると顧客から注文書を受領する。
(2) 営業担当者が注文書に基づいて受注管理システムに受注金額、広告掲載期間などを入力すると、受注管理システムから受注登録票が出力される。営業担当者は、受注登録票に注文書を添付して、営業部長に提出する。
(3) 営業部長が受注内容の妥当性と受注登録票の正確性を確認し、受注管理システムに承認入力を行うと、正式な受注案件として案件管理システムに反映される。
(4) 営業事務担当者は、営業部長から受注登録票及び注文書を受け取って保管し、そのコピーをポータルサイト運用部門に提出する。
なお、営業事務担当者は、受注管理システムへの受注登録、変更登録、承認入力の権限をもっていない。
(5) 当月受注案件の全てについて、(1)~(4)の処理が終了すると、案件管理システムで受注案件レポートが作成される。このレポートは、当月受注案件の受注金額、広告掲載期間などの受注内容の一覧表である。
2. 売上の会計処理
(1) S 社の広告掲載サービスでは、ポータルサイトに広告を一定期間掲載することに対して料金が発生し、広告掲載期間、広告掲載場所、広告スペースといった広告掲載条件によって料金が決定される。料金は、広告掲載期間終了後にその総額を顧客に請求する。
(2) S 社の経理処理規程では、広告掲載期間終了前でも、各月の売上は次の計算式によって計上することになっている。
各月の売上=料金総額÷広告掲載期間の日数×当月中で実際に掲載された日数
(3) 売上の会計処理は、毎月末に案件管理システムから会計システムへの自動仕訳で行われる。月別の売上金額は、案件管理システムに登録された案件ごとの受注金額及び広告掲載期間の日数に基づいて、(2)の計算式で求める。
3. ポータルサイト及びログシステムの処理
(1) ポータルサイト運用部門は、ポータルサイトに広告データを登録するとともに、営業部門から受け取った受注登録票のコピーに基づいて、広告掲載期間を設定する。広告は、設定された広告掲載期間に基づいて、自動的に掲載が開始され、終了となる。
ポータルサイト運用部門は、広告掲載開始の前日に、ポータルサイトに登録した内容を顧客と最終確認する。その結果、誤りがあった場合はポータルサイトに必要な変更を行うこととし、当該受注案件の作業を終了する。
(2) ログシステムは、広告がポータルサイトに実際に掲載された日、ポータルサイト閲覧者によるクリック回数などのログを記録するとともに、ログ分析レポートを作成する。ログ分析レポートには、広告掲載場所別、広告スペース別、広告掲載期間別をはじめ、詳細な分析データが記録されている。
【実施した監査の概要】
受注内容の変更プロセス及び売上の確定処理プロセス、並びに、それぞれについて監査チームが実施した監査手続及び評価の概要は、次のとおりである。
1. 受注内容の変更
(1) 受注内容の変更プロセス
・受注処理後、顧客との最終確認までの間に、広告掲載条件を変更する場合は、営業担当者が受注管理システムに変更登録を行う。
・変更登録を行うと、受注管理システムから変更登録票が出力される。
・変更内容は即座に案件管理システムに反映され、案件管理システムには変更履歴が記録される。
・営業担当者は変更登録票を営業部長に提出し、営業部長は変更内容を確認の上、変更登録票に承認印を押す。
・営業事務担当者は営業部長から承認済の変更登録票を受け取って保管し、そのコピーをポータルサイト運用部門に提出する。ポータルサイト運用部門は受け取った変更登録票のコピーに基づいて、ポータルサイトに必要な変更を行う。
・ポータルサイト運用部門は、広告掲載開始の前日に、ポータルサイトに登録した内容を顧客と最終確認する。その結果、誤りがあった場合はポータルサイトに必要な変更を行うこととし、当該受注案件の作業を終了する。
(2) 監査チームが実施した監査手続及び評価
・直近1か月分の変更登録票をレビューし、全ての変更登録票に営業部長の承認印があることを確認した。
・T 氏は、営業部長による変更登録票への承認印だけでは、正当な承認でなく受注内容の変更が行われるリスクに対するコントロールとしては不十分であると判断した。そこで、aの有無を調査したところ、営業事務担当者が毎月末に行っている、承認済の変更登録票とbの照合手続が、それに該当することが判明した。T氏は、それが有効に機能していることを確認した。
2. 売上の確定処理
(1) 売上の確定処理プロセス
経理部門では、月次決算に当たって、案件管理システムで作成される受注案件レポートと会計システムで作成される自動仕訳リストとの照合によって自動仕訳の正確性を確認し、当月の売上を確定している。
(2) 監査チームが実施した監査手続及び評価
・T 氏は、現状の受注・売上計上プロセスでは、各月の売上が正しく計上されないおそれがあると考えており、経理部門による照合手続ではそれを防止又は発見できないと判断した。
・これは決算数値の適正性に影響を与えるおそれがある重大な問題なので、監査報告書にcとして記載することにした。