中堅の食品販売会社であるK社では,電話による通信販売の顧客数が増加するのに伴って,コールセンタの能力が限界に近づいてきた。この状況に対応するために,全社にVoIP (Voice over Internet Protocol) システムを導入することによって,能力の増強を図ることにした。そこで,老朽化した電話交換機(PBX)に代えて,コールセンタシステム(以下,CCSという)を導入する計画を立てた。 【VoIPシステムの要件】 システム部,総務部及びベンダSEで構成されたVoIPシステム導入検討チームは,VoIPシステムの要件を整理し,次の(1)~(3)の方針を策定した後,図1に示すシステム構成を提案した。 (1) VoIPシステムの導入に当たって,次の機器を設置する。 ・全拠点(コールセンタ,システムセンタ,3か所の営業店)に音声GWを導入する。同時に,現在使用しているアナログ電話機を撤去し,代わりにIP電話端末を設置する。 ・音声GWとIP電話端末の"呼出し"や"切断命令"などの電話信号制御のためのプロトコルに,SIP (Session Initiation Protocol) を利用する。そのために,全拠点にSIPサーバを設置する。各拠点のSIPサーバは,拠点内のIP電話端末の内線電話番号とIPアドレスを管理する。 ・音声信号は,RTP (Real-time Transport Protocol) を利用して,音声GWとIP電話端末の間でやり取りされる。 ・VoIP対応のCCSサーバ及びCCS端末を,コールセンタに導入する。CCSサーバは,顧客管理システム,受発注システムなどの業務システムと接続される。コールセンタのオペレータは,顧客からの電話による問合せに対して,CCS端末によって顧客情報の確認や受発注された商品情報の照会,受発注状況の確認を行える。 ・CCSサーバは,全拠点のIP電話端末の内線電話番号やIPアドレスなどのIP電話端末情報を管理し,SIPを利用して得られた,着信した電話番号や応答時間などの着信履歴のデータを,データベースに保持する。 (2) コールセンタのオペレータの作業負荷を分散するために,CCSサーバを利用して,次の機能を導入する。 ・CCSサーバのデータベースで管理している,オペレータごとの着信履歴のデータを利用し,コールセンタ内で全員均等に着信するように制御する。 ・コールセンタに在席しているオペレータだけでは全ての着信に対応しきれない場合,CCSサーバはコールセンタへの着信電話を営業店に在席しているオペレータに自動転送する。 (3) その他のシステムは次のとおりになっており,VoIPシステムの導入に伴う変更はしない。 ・コールセンタから見て遠隔地にあるシステムセンタには,業務システムのサーバやその待機系機器が設置されており,24時間体制でシステム保守要員が常駐している。 ・各営業店では,事務職員がオペレータを兼務しており,営業店への問合せの電話に対応している。営業店への電話は,コールセンタからの自動転送を含め1日数十件なので,業務システムの情報をPCで閲覧しながら対応している。営業店には,カタログなど各種資料を保管する目的で,ファイルサーバを設置している。
本文中の下線①の試験稼働中に発生した,通話中の音声の途切れや遅延の原因となるものを解答群の中から選び,記号で答えよ。
(1) 呼び出すIP電話端末を決定したのはどの機器か。機器名とその機器が設置されている拠点をそれぞれ答えよ。
(2) 【VoIPシステムの要件】の中で,CCSサーバが停止していると実現できない,電話の着信に関する機能が二つある。それぞれ20字以内で答えよ。
CCSサーバの障害時に,システムセンタ設置の待機系機器を稼働させるに当たり,適切な記述を解答群の中から選び,記号で答えよ。
本文中の下線③で,CCSサーバのバックアップ方式をコールドスタンバイからホットスタンバイに変更することによって,障害発生時でも継続できるようになるコールセンタの機能は何か。【VoIPシステムの要件】の継続性を考慮して,20字以内で答えよ。