2013年 秋期 応用情報技術者試験 問6

ネットワークを使用するインターホンの設計

Z社が開発したインターホンは,3台のインターホン端末(以下,端末という)をネットワークに接続して,同時に2台が互いに通話できる。通信は全てネットワークを経由して行う。端末のソフトウェアは全て同じであり,端末の識別情報などは端末ごとに設定する。

[端末のボタン表示]

端末にはタッチパネル付きのLCDが取り付けられ,LCDには端末A~Cについて他の端末2台のボタンが,図1のように表示されている。ボタンは色(赤,青,黄のいずれか)及び点灯状態(点灯又は点滅)によって,表示されている端末の接続状態を示す。

図1 端末のボタン表示
端末Aのボタン表示端末Bのボタン表示端末Cのボタン表示
[B] [C][A] [C][A] [B]

[端末の接続状態]

ボタンで示された端末の接続状態を表1に示す。各端末は,ボタンで示された端末の接続状態を表1に示すボタンの色及び点灯状態で表す。

表1 ボタンで示された端末の接続状態
接続状態ボタン状態の説明
待受け青点灯ボタンで示された端末が,発呼又は着呼が可能な状態
応答待ち青点灯ボタンで示された端末が,呼び出した端末からの応答を待つ状態
発呼赤点滅ボタンで示された端末が,自端末を呼び出している状態
着呼青点滅ボタンで示された端末が,自端末から呼び出されている状態
通話赤点灯ボタンで示された端末が,自端末と通話している状態
通話不可黄点灯ボタンで示された端末が,自端末以外の端末と発呼,着呼,又は通話状態であり,その端末に対して発呼できない状態

端末の接続状態の遷移を図2に示す。ただし,起動直後の接続状態は待受けである。

注記:状態遷移するときの条件は,省略している。

[端末のボタン操作と通信]

例えば,接続状態が待受けである端末Aが,端末Bを呼び出して通話するときの各端末のボタン操作と端末間の通信は,次のとおりである。

(1) 端末Aからの端末Bの呼出し

  • 利用者が端末Aの青点灯しているボタンBにタッチすると,端末Aは接続状態を応答待ちにして,端末Bに"接続要求"を送信する。
  • 端末Bは"接続要求"を受信すると,自端末の接続状態を調べ,要求を受け付けられるときは,端末Aに"ACK応答"を,端末Cに"BUSY通知"をそれぞれ送信し,ボタンAを赤点滅にし,チャイム音を鳴らす。送信後,端末Bは接続状態を着呼にして,端末Aを発呼とみなす。一方,①端末Bが要求を受け付けられないときは,端末Aに"NAK応答"を送信する。
  • 端末Aは"ACK応答"を受信すると,ボタンBを青点滅にし,端末Cに"BUSY通知"を送信する。送信後,端末Aは接続状態を発呼にして,端末Bを着呼とみなす。一方,端末Aは"NAK応答"を受信すると,端末Aの接続状態を待受けにする。

(2) 端末Aでの発呼の取消し

  • 利用者が端末Aで青点滅しているボタンBにタッチすると,端末Aは端末Bに"OFF通知"を送信し,端末AのボタンBを青点灯にし,端末Cに"READY通知"を送信する。端末Aは接続状態を待受けにして,端末Bを待受けとみなす。
  • 端末Bは"OFF通知"を受信すると,ボタンAを青点灯にし,端末Cに"READY通知"を送信する。端末Bは接続状態を待受けにして,端末Aを待受けとみなす。

(3) 端末Bでの着呼の受付

  • 利用者が端末Bで赤点滅しているボタンAにタッチすると,端末Bは端末Aに"ON通知"を送信し,端末Bのボタン Aを赤点灯にする。送信後,端末Bは接続状態を通話にして,端末Aを通話とみなす。
  • 端末Aは"ON通知"を受信すると,端末Aのボタン Bを赤点灯にする。端末Aは接続状態を通話にして,端末Bを通話とみなす。

(4) 通話終了

  • 利用者が端末A又は端末Bの赤点灯しているボタンにタッチすると,その端末(以下,切断要求端末という)は,通話中の端末(以下,通話端末という)に"OFF通知"を送信し,切断要求端末の通話端末を示すボタンを青点灯にし,端末Cに"READY通知"を送る。切断要求端末は接続状態を待受けにして,通話端末を待受けとみなす。
  • 通話端末は,"OFF通知"を受信すると,通話端末の切断要求端末を示すボタンを青点灯にし,端末Cに"READY通知"を送信する。通話端末の接続状態を待受けにして,切断要求端末を待受けとみなす。

(5) 端末Cのボタンの色表示

  • 端末Cは,"BUSY通知"を受信すると,自端末を通話不可にする。また,"BUSY通知"を送信した端末を示すボタンを黄点灯にし,接続状態を通話不可とみなす。
  • 端末Cは,"READY通知"を受信すると,自端末を待受けにする。また,"READY通知"を送信した端末を示すボタンを青点灯にし,接続状態を待受けとみなす。

[タスク構成]

端末のプログラムは,制御,表示,音声処理,通信の四つのタスクから成る。各タスクは専用のメールボックスをもち,他のタスクからのメールを受信し,処理する。

(1) 制御タスク 接続状態,ボタンの色と点灯状態,及び端末間の通信を管理する。

  • 表示タスクから,タッチされたボタンの情報を受信する。通信タスクから,他の端末が自端末に送った情報を受信する。
  • 受信した情報に従って処理を行い,表示タスク,音声処理タスク及び通信タスク

に指示を送信する。

例えば,表示タスクから,d点灯のボタンがタッチされたことを通知されると,自端末の接続状態がeのとき,通信タスクに"接続要求"送信の指示を送信する。

(2) 表示タスク

  • 利用者がボタンにタッチしたとき,タッチされたボタンの情報を制御タスクに送信する。
  • 制御タスクからボタンの設定指示を受信し,ボタンの色及び点灯状態を変更する。

(3) 音声処理タスク

  • 制御タスクから通話開始指示を受信すると,音声データを相手の端末に送信するとともに,相手の端末から受信した音声データを再生する。
  • 制御タスクから通話終了指示を受信すると,音声データの送受信を中止する。

(4) 通信タスク

  • 他の端末から受信した応答などを制御タスクに送信する。制御タスクから指示を受信すると,指定された端末に応答,要求,通知のいずれかを送信する。
出典:平成25年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問6