2009年 春期 応用情報技術者試験 問11

SLA (Service Level Agreement) に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

T社は,健康食品の製造・販売業を営んでいる。2006年1月にインターネット販売システム(以下,販売システムという)を自社で構築し,システム運用・保守を行ってきた。2008年4月,システムの企画,開発及び保守の業務を自社に残し,システム運用業務をU社に委託した。当時両社は,2009年4月に正式なSLAを締結することを目指して1年間試行することに合意し,表1に示すSLA案を作成した。

表1 SLA案(抜粋)
〔前提条件〕
・1年間のシステム稼働日数を360日とする。
・オンラインサービス(オンライン処理)は,1日当たり20時間(システム稼働日の4時から24時まで),年間予定稼働時間は7,200時間とする。サービス時間延長は行わない。
・バッチ処理は,オンラインサービス終了後速やかに開始し,3時までに完了させる。
・2008年度(2008年4月〜2009年3月)の販売システムへのアクセス予想件数は,5,000万件とする。
・オンラインサービス,バッチ処理を問わず,システム障害が発生した場合は,障害連絡網によって,10分以内にT社へ連絡を相互通知する。
〔委託業務の範囲〕
・T社販売システムに係る次のシステム運用業務
 運用管理,入力管理,データ管理,出力管理,ソフトウェア管理,ハードウェア管理,ネットワーク管理,構成管理,建物・関連設備管理
〔役割と責任分担〕
・販売システムの企画,開発及び保守の業務は,T社の役割とする。
・販売システムに係る建物・関連設備,ハードウェア及びソフトウェアは,T社が提供する。
〔サービスレベル〕
"サービスレベルの要求水準" 参照
(以下,省略)

"サービスレベルの要求水準"を表2に示す。

表2 サービスレベルの要求水準(抜粋)
項番サービスレベル評価項目説明評価項目説明要求水準
aオンライン業務サーバの可用性年間予定稼働時間のうち,正常に利用できた時間の比率99.4%以上
bバッチ処理完了時間遵守率バッチ処理が3時までに完了できた日数の比率95.0%以上
cシステム障害通知遅守率システム障害発生後10分以内にT社に障害通知できた回数の比率100.0%
注 自然災害,停電などライフライン障害の事由によるものは,免責事項として設定し,両社で合意している。

業務委託開始から1年を経過した2009年4月に,U社はT社に対し,2008年度システム運用業務の活動実績を次のとおり報告した。

〔2008年度活動実績報告(要旨)〕

・販売システムへのアクセス件数は,6,500万件であった。

・オンライン業務サーバは,年間予定稼働時間のうち,36時間サービスを停止した。

・バッチ処理の平均完了時刻は,2時42分であった。

・バッチ処理を3時までに完了できなかった日が27日あった。

・56件のシステム障害が発生した。そのうち,障害発生後10分以内にT社に障害通知できなかった件数は,3件であった。

T社は,U社の活動実績報告を基に,サービスレベルの要求水準に対する達成度の評価を行った。その結果をU社に通達したが,バッチ処理完了時間遵守率の評価について,両社合意に至らなかった。数日後,U社は次のような追加報告を行った。

〔2008年度活動実績追加報告(要旨)〕

・バッチ処理を3時までに完了できなかった27日のうち,19日はT社提供のプログラム設計不良に起因するもので,8日はU社のオペレーションミスに起因するものであった。

・バッチ処理の平均完了時刻は,2007年度と比較して平均22分遅かった。また,2時50分台で完了した日は,全体の30%を超えていた。

・障害通知を10分以内にできなかった原因は,次の二つである。

原因①:深夜のバッチ処理での障害発生において,運用オペレータが自分で復旧できると判断し,独自に障害対応オペレーションを試みたが,結局復旧できずに障害通知が遅れたケースが2件あった。運用オペレータは,T社システム担当者の手順を考え,オペレーション手順書には記載されていない手順で障害対応を試みた。

原因②:オペレーション室に張られていた障害連絡網が最新版でなかったので,T社システム担当者になかなか連絡を取れなかったケースが1件あった。後日T社に問い合わせたところ,T社の障害連絡網原本は更新されていたが,T社側でオペレーション室に最新版コピー(紙)の配付を漏らしていたことが判明した。障害連絡網の配付方法は特に定められていなかったが,過去に配付が漏れたことは一度もなかった。

T社は,U社の追加報告を考慮した上で再評価を行い,今度はU社と合意した。また,T社は,2009年度の事業見通しを次のように語った。

・インターネット販売キャンペーンを展開したことによって,2008年度の販売件数は当初予想比3割増となった。2009年度も更に3割増になると見込んでいる。

平成21年度 春期 応用情報技術者試験 午後 問11