2018年 秋期 応用情報技術者試験 問7

カードを使用した電子扉システムの設計

E社は、電子錠を開発している会社である。E社では、RFIDタグを内蔵したカード(以下、入退室カードという)を使用して、扉の電子錠を制御するシステム(以下、電子扉システムという)を開発することになった。

電子扉システムは企業向けであり、従業員ごとに個別の入退室カードを配布して、従業員の入退室管理に用いる。

電子扉システムの構成

電子扉システムは、扉、カードリーダ、制御部などから成る電子扉ユニットと、各電子扉ユニットとLANで接続されたサーバから構成される。電子扉システムの構成を図1に示す。

・ドアクローザは、扉の上部に有り、内蔵するばねの力で扉を自動的に閉める。

・レバーは扉の室内側と室外側に有り、電子錠で開錠/施錠される。開錠状態では、レバーを下に回して扉を開けることができ、手を放すとレバーは元に戻り扉は閉まる。施錠状態では、扉は開けられない。また、扉を開けたまま施錠することができ、このときには扉が閉まると扉を開けることができなくなる。

・カードリーダは、室内側と室外側に取り付けられている。

・電子扉ユニットには、扉識別コードが設定されている。

電子扉ユニットのハードウェア構成

電子扉ユニットのハードウェア構成を図2に示す。

・扉識別コードは、電子扉ユニットごとに割り当てられ、制御部が保持する。

・入退室カードには、カードごとに割り当てられたカード識別コード、有効期限などの情報を格納する。

・制御部は、MPUを内蔵しており、各ハードウェアを制御する。

・カードリーダは、室内側及び室外側に1台ずつ設置し、室内側を示すコードと、室外側を示すコード(以下、リーダ設置区分コードという)をそれぞれ割り当てる。カードリーダは、入退室カードの情報を読み込む。

・開閉センサは、扉が開いたこと及び扉が閉まったことを検出する。

・電子ブザーは、単発音の許可音・エラー音を発生したり、連続音の警告音を鳴動したりする。

・電子錠は扉のレバーを開錠/施錠する。

・LANインタフェースは、LANに接続してサーバと通信する。

電子扉システムの動作

(1) 入退室カードをカードリーダにかざすと、入退室カードの情報を読み込み、電子扉ユニットの情報とあわせてサーバに送信する。

(2) サーバからの応答が開錠許可ならば、許可音を発生して開錠する。開錠してからt₁秒以内に扉が開かないときは施錠する。

(3) サーバからの応答が開錠許可でないとき、エラー音を発生する。

(4) 扉が開いてから、t₂秒以内に扉が閉まらないとき、扉が閉まるまで警告音を鳴動し続ける。

t₁及びt₂は、必要に応じて変更が可能で、t₂ > t₁ > 1秒とする。

制御部とサーバ間の通信

サーバは、入退室可能な入退室カードの保有者の情報を扉ごとに管理する。

(1) 制御部は、カードリーダで入退室カードの情報を読み込んだとき、カード識別コード扉識別コード及びリーダ設置区分コードをサーバに送信する。

(2) サーバは、カード識別コードで入退室カードの保有者を特定し、扉識別コードで入退室する扉を特定し、リーダ設置区分コードで入室又は退室を識別する。これらの情報から、入退室カードの保有者が入退室を許可されているか判定して、判定結果を制御部に送信する。

制御部のプログラムの処理

制御部のプログラムの処理フローを図3に示す。この処理は、室内側又は室外側のカードリーダに入退室カードをかざすと開始される。また、この処理の間に新たに入退室カードがかざされても、終了するまで処理を続行する。

・タイマは、OSのタイマ機能を使用する。タイマに時間を設定すると計時が始まり、設定した時間が経過するとタイマ満了イベントが通知される。タイマが満了する前にタイマ取消しを行うと、タイマ満了イベントは通知されない。

・開閉センサは扉が開いたときに開扉イベントを通知し、扉が閉まったときに閉扉イベントを通知する。

・処理"カード情報を読み込む"では、入退室カードの情報を読み込む。

・処理"イベント待ち"では、開扉イベント、閉扉イベント、及びタイマ満了イベントを待ち受ける。

・処理"開錠する"及び処理"施錠する"では、制御部が電子錠に開錠又は施錠を通知する。その通知から実際に電子錠が開錠/施錠するのに1秒掛かり、その間、次の処理は行わない。

不具合の発生

電子扉システムの動作をテストしていたところ、扉を開けたまま t₂秒経過しても警告音が鳴動しない不具合が、図3の"①施錠する"を処理した後に発生した。

なお、不具合が発生したときに、入退室カードの情報は正しく読み込まれており、LAN及びサーバに問題はなく、ハードウェア及びソフトウェアは通常の処理をしていた。

出典:平成30年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問7