2012年 秋期 応用情報技術者試験 問10
プロジェクト計画
文具類の販売を行うZ社では、販売予算システムを開発することになった。販売予算システムは、予算登録、予算集計、承認ワークフローの三つのサブシステムから構成される。システム部のY君が、プロジェクトマネージャに任命され、スケジュールを立案することになった。
[アクティビティリストとプロジェクトスケジュールネットワーク図の作成]
プロジェクトでは、販売予算システム全体を対象に基本設計を行った後、各サブシステムの詳細設計を開始する。詳細設計では、サブシステムを構成する全てのプログラムの画面項目や処理内容の詳細仕様を決定し、最後にレビューを行う。詳細設計、プログラム作成・テスト、結合テストは、サブシステムごとに行い、サブシステム同士は同時並行に開発を行うことができる。全てのサブシステムの結合テストが完了すると、システム結合テストを開始する。
Y君は、必要なアクティビティ、順序と所要期間を、表1のアクティビティリストにまとめた。
記号 | サブシステム | アクティビティ | 所要期間(日) | 先行アクティビティ |
---|---|---|---|---|
A | (システム全体) | 基本設計 | 75 | ― |
B1 | 予算登録 | 詳細設計 | 30 | A |
B2 | プログラム作成・テスト | 30 | B1 | |
B3 | 結合テスト | 20 | B2 | |
C1 | 予算集計 | 詳細設計 | 25 | A |
C2 | プログラム作成・テスト | 25 | C1 | |
C3 | 結合テスト | 20 | C2 | |
D1 | 承認ワークフロー | 詳細設計 | 15 | A |
D2 | プログラム作成・テスト | 15 | D1 | |
D3 | 結合テスト | 10 | D2 | |
E | (システム全体) | システム結合テスト | 30 | B3, C3, D3 |
各サブシステムの作業は、表2のサブシステム作業要員リストに基づいて行う。
記号 | サブシステム | 詳細設計 | プログラム作成・テスト | 結合テスト |
---|---|---|---|---|
B1, B2, B3 | 予算登録 | P君 | S君 | P君 |
C1, C2, C3 | 予算集計 | Q君 | T君 | Q君 |
D1, D2, D3 | 承認ワークフロー | R君 | U君 | R君 |
Y君は、表1を基に、図1のプロジェクトスケジュールネットワーク図を作成した。
ES:最早開始日 → : アクティビティ間の順序関係
EF:最早終了日
LS:最遅開始日
LF:最遅終了日
アクティビティの最早開始日、最早終了日、最遅開始日、最遅終了日はプロジェクトの開始日を1日目とした日数で表し、休日は考慮しない。最早終了日と最遅終了日の差は余裕日数である。プロジェクトの完了予定日は、開始から185日目となった。
[プロジェクト期間短縮の検討]
Y君がプロジェクトの完了予定日を上司に報告したところ、多少コストが増えても構わないから、期間短縮を検討するよう指示された。そこでY君は、期間短縮策として、次の二つの方式を検討した。
方式1: 他のプログラムと独立した機能については、サブシステムを構成する個々のプログラムの詳細設計を完了する都度、最後のレビューを待たずに、逐次プログラム作成・テストに着手する。詳細設計とプログラム作成・テストを並行して行うことによって期間を短縮する。予算登録サブシステムでは、設計者とプログラマの日程調整を行えば、この方式で、プログラム作成・テストの開始を20日間早められることが分かった。以後、表1の所要期間のまま、予算登録サブシステムのプログラム作成・テスト完了までの期間を20日間短縮できる。
予算集計と承認ワークフローの各サブシステムについては、開発体制などの理由によって、この方式での期間の短縮はできないことが分かった。
方式2: プログラム作成・テストにプログラマを追加投入することによって、期間を短縮する。Y君は、各サブシステムの所要期間の短縮と必要なコストを検討し、表3のプログラム作成・テストの期間短縮策の候補一覧を作成した。表3の番号①~③の期間短縮策の候補は、複数を同時に実施することができる。ただし、それぞれは1回ずつしか実施できない。
番号 | 記号 | サブシステム | アクティビティ | 短縮前所要期間(日) | 短縮後所要期間(日) | 追加コスト(万円) |
---|---|---|---|---|---|---|
① | B2 | 予算登録 | プログラム作成・テスト | 30 | 15 | 200 |
② | C2 | 予算集計 | プログラム作成・テスト | 25 | 15 | 100 |
③ | D2 | 承認ワークフロー | プログラム作成・テスト | 15 | 10 | 50 |
[プロジェクト実施要員変更の検討]
Y君が部内の要員の作業計画を立案していたところ、上司から、R君をより優先度が高い別のプロジェクトに従事させたいので、期間短縮はできなくてもよいから、R君が担当する予定だった作業をQ君に担当させられないか、再検討するよう指示された。そこでY君は、R君と同等の能力をもつQ君が予算集計と承認ワークフローの作業を当初予定の所要期間で順次行うことにし、図1のプロジェクトスケジュールネットワーク図を見直した。見直し後のプロジェクトスケジュールネットワーク図を、図2に示す。