2023年 春期 応用情報技術者試験 問5

Webサイトの増設

F社は、契約した顧客(以下、顧客という)にインターネット経由でマーケット情報を提供する情報サービス会社である。F社では、マーケット情報システム(以下、Mシステムという)で顧客向けに情報を提供している。Mシステムは、WebアプリケーションサーバA(以下、WebAPサーバという)、DNSサーバ、ファイアウォール(以下、FWという)などから構成されるWebサイトとF社の運用PCから構成される。現在、WebサイトはB社のデータセンター(以下、b-DCという)に構築されている。

現在のMシステムのネットワーク構成(抜粋)を図1に、DNSサーバbに登録されているAレコードの情報を表1に示す。

注記:L2SW:レイヤ2スイッチ、L3SW:レイヤ3スイッチ、広域イーザ網:広域イーサネットサービス網
表1 DNSサーバbに登録されているAレコードの情報
項番機器名称サーバのFQDNIPアドレス
1DNSサーバbnsb.example.jp200.a.b.1/28
2WebAPサーバbmiap.example.jp200.a.b.2/28
3DNSサーバbnsb.f-sha.example.lan192.168.0.1/24
4WebAPサーバbapb.f-sha.example.lan192.168.0.2/24
注記1:200.x.y.z(x,y,zは,0~255の整数)のIPアドレスは,グローバルアドレスである。
注記2:各リソースレコードのTTL(Time To Live)は,604800が設定されている。

【Mシステムの構成と運用】

・Mシステムを利用するにはログインが必要である。

・FWbには、DMZに設定されたプライベートアドレスとインターネット向けのグローバルアドレスを1対1で静的に変換するNATが設定されており、表1に示した内容で、WebAPサーバb及びDNSサーバbのIPアドレスの変換を行う。

・DNSサーバbは、インターネットに公開するドメインexample.jpとF社の社内向けのドメインf-sha.example.lanの二つのドメインのゾーン情報を管理する。

・F社のL3SWの経路表には、b-DCのWebサイトbへの経路と①デフォルトルートが登録されている。

・運用PCには、②優先DNSサーバとして、FQDNがnsb.f-sha.example.lanのDNSサーバが登録されている。

・F社の運用担当者は、運用PCを使用してMシステムの運用作業を行う。

【Mシステムの応答速度の低下】

最近、顧客から、Mシステムの応答が遅くなることがあるという苦情が、Mシステムのサポート窓口に入ることが多くなった。そこで、F社の情報システム部(以下、システム部という)の運用担当者のD主任は、運用PCを使用して次の手順で原因究明を行った。

(i)顧客と同じURLであるhttps://a/でWebAPサーバbにアクセスし、顧客からの申告と同様の事象が発生することを確認した。

(ii)FWbのログを検査し、異常な通信は記録されていないことを確認した。

(iii)SSHを使用し、③広域イーサ網経由でWebAPサーバbにログインして CPU使用率を調べたところ、設計値を超えた値が継続する時間帯のあることを確認した。

この結果から、D主任は、WebAPサーバbの処理能力不足が応答速度低下の原因であると判断した。

【Webサイトの増設】

D主任の判断を基に、システム部では、これまでのシステムの構築と運用の経験を生かすことができる、現在と同一構成のWebサイトの増設を決めた。システム部のE課長は、C社のデータセンター(以下、c-DCという)にWebサイトcを構築してMシステムを増強する方式の設計を、D主任に指示した。

D主任は、c-DCにb-DCと同一構成のWebサイトを構築し、DNSラウンドロビンを利用して二つのWebサイトの負荷を分散する方式を設計した。

D主任が設計した、Mシステムを増強する構成を図2に示す。

図2の構成では、DNSサーバbをプライマリDNSサーバ、DNSサーバcをセカンダリDNSサーバに設定する。また、運用PCには、新たにbを代替DNSサーバに登録して、bも利用できるようにする。

そのほかに、L3SWの経路表にWebサイトcのDMZへの経路を追加する。

DNSサーバbに追加登録するAレコードの情報を表2に示す。

表2 DNSサーバbに追加登録するAレコードの情報
項番機器名称サーバのFQDNIPアドレス
1DNSサーバcnsc.example.jp200.c.d.81/28
2WebAPサーバcmiap.example.jp200.c.d.82/28
3DNSサーバcnsc.f-sha.example.lan192.168.1.1/24
4WebAPサーバcapc.f-sha.example.lan192.168.1.2/24
注記:各リソースレコードのTTLは、表1と同じ604800を設定する。

表2の情報を追加登録することによって、WebAPサーバb,cが同じ割合で利用されるようになる。DNSサーバb,cにはc転送の設定を行い、DNSサーバbの情報を更新すると、その内容がDNSサーバcにコピーされるようにする。

WebAPサーバのメンテナンス時は、作業を行うWebサイトは停止する必要があるので、次の手順で作業を行う。④メンテナンス中は、一つのWebサイトでサービスを提供することになるので、Mシステムを利用する顧客への影響は避けられない。

(i)事前にDNSサーバbのリソースレコードのdを小さい値にする。

(ii)メンテナンス作業を開始する前に、メンテナンスを行うWebサイトの、インターネットに公開するドメインのWebAPサーバのFQDNに対応するAレコードを、DNSサーバ上で無効化する。

(iii)この後、一定時間経ってメンテナンス作業が可能になるが、作業開始が早過ぎると顧客に迷惑を掛けるおそれがある。そこで、⑤手順(ii)でAレコードを無効化したWebAPサーバの状態を確認し、問題がなければ作業を開始する。

D主任は、検討結果を基に作成したWebサイトの増設案を、E課長に提出した。増設案が承認され実施に移されることになった。

出典:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午後 問5