応用情報技術者試験 過去問 2017年(平成29年) 秋期 午後 問10
サービスデスク
R社は,全国で電子機器の製造と販売を行う会社である。R社のシステム部では,数年前から,R社で運用するシステムのインシデントに電話で対応するサービスデスクを運営している。サービスデスクのサービス提供日はR社営業日,サービス提供時間帯は9時から18時までであり,利用者はR社の社員だけである。
システム部のITサービスマネージャのS君は,サービスデスクで必要なシステム及びインシデント管理の手順を構築し,現在はサービスデスクの責任者を務めている。
サービスデスクは,S君とオペレータ数名で構成されている。
[サービスデスクの業務]
サービスデスクを運営する前までは,利用者からのインシデントに対して,アプリケーションに関することはシステム部のシステム開発課が,アプリケーション以外に関しては同部システム運用課が対応していた。"連絡先を選別する必要があって面倒である。"との利用者の意見を受けて,システム部ではサービスデスクを立ち上げ,機能的にaとした。
サービスデスクには,音声自動応答システム(以下,IVRという),コンピュータと電話システム間を統合させたb,及びサービスデスクを支援するアプリケーション(以下,インシデント管理システムという)を導入した。
サービスデスクの利用者は,サービスデスクに電話を掛けると,IVRからの音声自動応答のメッセージ(以下,ガイドという)に従って,PCの障害やアプリケーションの障害といったインシデントの分類を選択肢から選び,利用者の情報などを入力した後,サービスデスクのオペレータと通話を開始する。IVRに登録する音声や利用者への応答に関する分岐ルールは,サービスデスクで設定することができる。
bでは,利用者が入力した情報に基づいて,システム部が運用する社員データベースから利用者の詳細をオペレータのPC画面に表示する。オペレータは,利用者との通話の内容や対応の状況を,インシデント管理システムに記録する。
インシデント管理システムには,オペレータが,全てのインシデントの対応記録を対象に,該当する事象と解決策を照会できる機能があって,①再発したインシデント(以下,再発インシデントという)の場合は,対応記録を参照して解決策を回答することができる。
サービスデスクが実施するインシデント管理の手順を表1に,インシデント発生時の対応フローを図1に示す。
手順 | 内容 |
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記録 |
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分類 |
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記録の更新 |
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段階的取扱い |
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解決 |
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S君は,毎週月曜日に前週のサービスデスクの活動状況を分析している。インシデント管理システムのデータを基に,オペレータの実施手順にミスがなかったか,利用者対応に不備がなかったかなどをまとめる。S君はこの分析作業に合わせて,サービスデスクの対応記録を基に,高い頻度で発生する再発インシデントの中で,利用者が自分で解決できる内容を取りまとめて,月曜日の夕方に,利用者の誰もが利用できるR社の情報掲示板にFAQとして掲載する。サービスデスクでは,利用者に,インシデントが発生した場合は,まずFAQを参照して解決を試みること,FAQで解決できない場合にサービスデスクを利用することを推奨している。
[顧客満足調査と改善策の実施]
システム部では,毎年,サービスデスクの利用者を対象に顧客満足調査を実施している。S君は,実施した調査の結果を分析した。利用者のコメントを分析した結果は次のとおりである。
- 多くの利用者で同じ事象のインシデントが発生すると,サービスデスクへの電話が集中し,電話がつながりにくくなる。このような状況は,数日続くことがある。
- 利用者が使うPCで発生するインシデントには,利用者の簡単な操作で解決するものがある。利用者からは,"このような解決策については,もっと早く分かるようにしてほしい。"といった要望がある。
- 利用者のインシデントが,サービスデスクのオペレータとの1回の通話で解決しない場合がある。利用者はオペレータからの次の連絡を待っているが,長い間待たされることがあり,サービスデスクに電話して催促を行っている。
- FAQの中には,長い間参照されていないものが多く存在し,利用者から"古いものが残っているので,調べるのに手間が掛かる。"との声もある。
S君は,最近のサービスデスクの電話対応件数を確認した。先々週の火曜日に多くの利用者で同じ事象のインシデントが発生して,サービスデスクの電話対応が急増し,電話がつながりにくくなっていた。電話対応件数は,その後,少しずつ減少したが,先週の月曜日まで多い状況が続いた。該当するインシデントは,利用者に解決策を伝えれば,利用者が自分で解決できるものであった。サービスデスクの最近2週間の電話対応件数の推移は,図2のとおりであった。

また,S君は,インシデントの段階的取扱いの状況を調べてみた。多くの調査依頼先は調査依頼先からすぐにサービスデスクに調査の回答が届いているが,回答に長い時間を要しているものもあった。調査回答に時間が必要な場合には,利用者からサービスデスクに催促の電話が掛かってくることがあった。サービスデスクでは,利用者からの電話で初めて,サービスデスクから利用者への回答が滞っていることを認識し,急いで調査依頼先に連絡して調査の回答をもらうことがあった。
S君は,以上の調査の結果分析で判明した課題を整理し,次の改善策をまとめた。
- FAQの改善
- 電話対応件数を減らすために,多くの利用者に共通して発生する再発インシデントについては,c。
- FAQの陳腐化を防ぐために,古いFAQを見直し,不要な項目は削除する。また,利用頻度に応じて掲載順を工夫し,検索しやすくする。
- これらの対策に必要な人的資源及び必要なシステムを整える。
- IVRの改善
一部の"利用者の簡単な操作で解決できるインシデントの解決策"を,早期に回答できるように,②IVRのガイドを改善する。 - インシデント管理の手順の改善
"利用者が,サービスデスクのオペレータとの1回の通話でインシデントを解決できないで,長い間待たされることがある"事象については,サービスデスクがdを管理できているか調査した。その結果,管理精度を向上させる必要があることが分かったので,インシデントの段階的取扱いの手順に,③内容を追加することにした。