中堅製造業のX社は,これまで国内中心に事業を拡大してきたが,今回の中期計画では,グローバルなビジネス展開と経営のスピードアップによる売上・利益の拡大を経営目標に掲げた。社長からは,直ちに全社業務改革を進め,販売・生産・会計の業務プロセスのグローバル対応とともに,現在は独立している各システムの統合を2年間で実現するよう,関係役員に検討指示が出された。この指示を受け,実現案が経営会議で審議され,業務改革委員会(以下,改革委員会という)とシステム導入プロジェクト(以下,導入PJという)が設置された。また,短期間でのシステム統合の実現策として,ERPパッケージ(以下,ERPという)を導入するという方針が決定された。現行の基幹システムは,販売システム・生産システム・会計システムから構成され,会計システムは,販売システム及び生産システムとの間でデータ連携を行っている。 [全社業務改革の推進体制] 経営会議の方針を受けて,図1の改革委員会と導入PJが組織され,全社推進体制確立のために,社長を責任者とするステアリングコミッティが設置された。①ステアリングコミッティは,全社業務改革の最終判断などの役割・責任を担う。改革委員会の委員長にはZ常務,導入PJのプロジェクトリーダには情報システム部のY部長が,それぞれ任命された。全社業務改革の推進のために,改革委員会の下,販売部門・生産部門・会計部門による業務改革チームが設置され,各チームのリーダには,3部門の代表者が任命された。改革委員会には,メンバとして3部門の部長と各チームのリーダが参画する。情報システムの開発は,導入PJが担当し,販売・生産・会計の3業務の設計・開発とインフラの計4チームが設置され,それぞれのチームに情報システム部のSEが配置された。 [ERP導入方針(案)] ERP導入を成功させるには,利用部門のニーズに合わせてシステムを開発してきた従来の意識を変える必要がある。この点を踏まえ,Y部長は早速,ERP導入方針(案)を(1)~(4)のとおり策定した。 (1) X社と同じ業界で十分な実績のあるERP製品を導入する。当製造業の業務向けの□a□があり,ERP導入の専門コンサルタントがいるベンダ2社(T社とU社)の製品及びコンサルテーション能力を比較する。ERP自体の機能改造は行わないので,各社の今後の製品強化計画も考慮する。 (2) 選定に際しては,全社業務改革の推進体制の各チームから選抜した,販売部門・生産部門・会計部門・情報システム部門のメンバから構成されるERP評価ワーキンググループ(以下,WGという)を発足させる。評価の対象となる機能は,X社が使う販売・生産・会計の業務範囲に限定し,運用面などの非機能要件も併せて検討する。 (3) ERPの本番移行は,統合化の開発リスクを考慮し,全業務の一斉リリースでなく,2段階リリースとする。1次リリースに販売システム・生産システムを先行させ,2次リリースを会計システムとする。 (4) 開発は,利用部門がERPを実際に操作して評価できる,□b□方式で行う。 Y部長は,このERP導入方針(案)を社長に説明し,承認を得た後,導入方針に基づいて,今後の活動計画をまとめた。WGのグループリーダには,Y部長が任命された。
本文中の下線①について,ステアリングコミッティは,全社業務改革の最終判断のほかに,どのような役割・責任を担うのか。図1の全社業務改革の推進体制を参考に,30字以内で述べよ。
今回,2段階リリースを採用した。一斉リリースの場合には必要としないシステム機能であって,開発が必須となるものを35字以内で述べよ。
(1) WGが行う評価としてふさわしいものを解答群の中からすべて選び,記号で答えよ。
(2) 本文中の下線②について,次期の製品強化計画を含めて評価するのはなぜか。その理由を20字以内で述べよ。