応用情報技術者試験 過去問 2009年(平成21年) 秋期 午後 問3

原価計算システムの再構築

E社は、電子部品メーカである。E社の工場では、製品の製造原価を計算し、分析するシステム(以下、原価計算システムという)を再構築することになった。今回の再構築では、より正確な原価を、より短期間で分析できるシステムが求められている。

情報システム部のF君は、新原価計算システムの要件定義を担当している。

製造原価の分類

F君はまず、製造原価を分類した。製造原価は、材料費、労務費、経費に分けられ、さらにそれぞれが、直接費、間接費に分けられる。

E社の主な費用には、次のものがある。

  1. ① 営業担当者の出張旅費
  2. ② 外注加工費
  3. ③ 広告宣伝費
  4. ④ 工場管理スタッフの給料
  5. ⑤ 工場機械の減価償却費
  6. ⑥ 工場消耗品費
  7. ⑦ 主要材料費
  8. ⑧ 直接作業員の直接作業時間分の賃金
  9. ⑨ 本社スタッフの給料
  10. ⑩ 本社の光熱費

これらの費用のうち、製造原価にあたるものを選び出し、表1のとおり分類した。

表1 製造原価の分類
直接費 間接費
材料費 (略) a
労務費 (略) b
経費 (略) c

現状の製造原価計算

F君は、工場で製造している2種類の組込みボード、製品Aと製品Bの製造原価を現状の原価計算システムで確認した。先月の実績を比較してみると、表2のとおりであった。両製品ともハードウェアは同じである。ソフトウェアも同様のものを使っているが、製品Aでは得意先のニーズに応じてソフトウェアを変更するのに対し、製品Bでは標準化されていて変更はしない。製品1個当たりの直接材料費と直接作業時間、直接作業員の時間当たり賃金は、製品A、Bとも同じであった。間接費は、合計18,000千円を、直接作業時間を基に配賦している。

表2 製品A、Bの製造原価の比較(金額は千円単位)
項目 製品A 製品B 製品A 製品B
(合計) (合計) (1個当たり) (1個当たり)
販売数量(個) 800 1,000
売上高 24,000 25,000 30 25
直接材料費 1,600 2,000 2 2
直接労務費 2,400 3,000 3 3
直接費計 4,000 5,000 5 5
間接費計 8,000 10,000 10 10
製造原価計 12,000 15,000 15 15
d 12,000 10,000 15 10
注記:ここで、月初・月末における仕掛品と製品の在庫に変動はないものとする。

F君は、本来、ソフトウェアが標準化されている製品Bの方が、製造単価(1個当たりの製造原価)が安くなるべきなのに、製品Bの製造単価が、製品Aと同じになっていることに疑問を覚えた。そこで、製品Aと製品Bの製造単価が同じになっている原因を調べた上で、より正確な把握ができるよう新しい原価計算の方式を検討した。

新原価計算システム

F君は、間接費に着目し、新原価計算システムでは、間接費を、アクティビティ(以下、活動という)を基準に割り当てる方法を提案することにした。具体的な手順は、次のとおりである。

  1. 間接費を構成している活動を列挙する。
  2. 活動ごとの間接費を算出する。
  3. 活動ごとに測定の単位を決める。
  4. 原価計算対象の製品が消費した単位数で案分することによって、間接費を製品に割り当てる。

F君は、この方法で、先月の間接費18,000千円を活動ごとに分類し、表3のとおりまとめた。

表3 活動ごとの間接費
活動 設計変更 調達 製造 製品検査
活動ごとの間接費(千円)
(18,000千円の内訳)
4,000 2,000 9,000 3,000
測定の単位 設計
変更件数
e 機械
使用時間
検査回数
製品A平均(単位数) 4 10 90 20
製品B平均(単位数) 1 10 60 10

表3から求められる先月の製品Bの間接費の合計は、f千円となった。

E社では、設計に関する情報は設計管理システムで、調達に関する情報は購買システムで、製造に関する情報は工場の稼働管理システムで、製品検査情報は検査管理システムで、それぞれ管理している。F君は、各システムの担当者に依頼し、先月消費した単位数のデータを、それぞれ、手動でダウンロードし、所定の書式に加工してから送ってもらった。多くのシステム担当者から、手間が掛かるので、定期的にデータを提供する必要があるなら、担当者の手を煩わせない方法を考えてほしいと言われている。

F君は、現在、新原価計算システムの要件の詳細をまとめている。

出典:平成21年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問3