データベーススペシャリスト試験 過去問 2024年(令和6年) 秋期 午後Ⅱ 問2
車体部品メーカーの資材調達業務の概念データモデリングに関する問題
B社は車体部品メーカーである。B社では、調達システムの再構築を進めており、業務分析を行い、概念データモデル及び関係スキーマを設計した。
【業務分析の結果】
- 社内外の組織に関連する資源
- 組織
① 組織は、部、課、係などの部署を階層化したものである。
② 組織は、組織コードで識別し、組織名、組織階層レベル、上位組織をもつ。
- 倉庫
① 倉庫は、資材を保管する建屋である。
② 倉庫は、全国7か所の生産拠点内に併設して7か所ある。
③ 倉庫は、倉庫コードで識別し、倉庫名、管轄する組織をもつ。
- 棚
① 棚は、倉庫内で資材を保管するための区画である。
② 棚は、倉庫コードと棚番号で識別し、収納容積をもつ。
- 資材メーカー
① 資材メーカーは、資材の調達先企業である。
② 資材メーカーは、資材メーカーコードで識別し、資材メーカー名をもつ。
- 組織
- 資材の保管方法
① 金属材料は、一つの棚に1ロールずつ保管する。
② 金属材料以外の資材は、一つの棚に1種類の資材を保管する。ただし、保管するときに、同じ種類の資材を保管している棚に空きがあれば、空いているところから保管し、保管し切れない分を次の棚に保管する。
③ 梱包資材については、購入数量が多大なので、B社の倉庫に保管できない分を資材メーカーに保管してもらう。
- 在庫数量の把握方法、基準在庫数量の設定
① 資材の在庫は、倉庫別と棚別の2階層で品目別にもつ。
② 資材メーカーに保管してもらう梱包資材の残りの保管数量は、納入ごとに資材メーカーに連絡してもらっているので、資材調達業務ではもたない。
③ 樹脂材料、薬品類、梱包資材は、倉庫ごと品目ごとに基準在庫数量を決めている。
- 発注の種類
① 発注には、長期発注、スポット発注、定量発注、保管条件付き発注の4種類があり、発注区分で分類する。
② 長期発注では、金属材料を対象とし、購入計画に基づいて、複数月にわたって毎月同じ量を納入してもらう。購入計画の9割を長期発注で購入している。
③ スポット発注では、金属材料を対象とし、長期発注で不足する分を発注する。
④ 長期発注及びスポット発注が対象とする金属材料の購入単価は、キログラム当たりの価格であり、発注時に決定する。
⑤ 定量発注では、樹脂材料と薬品類を対象とし、倉庫内の在庫数量が基準在庫数量を下回った時点で一定量を発注する。樹脂材料と薬品類とを併せて定量発注品と呼ぶ。定量発注品では、資材メーカーとの間で次を取り決めている。
- 1回の発注の発注数量を示す購入ロットサイズ(以下、ロットサイズをLSという)
- 発注してから倉庫に納入するまでの日数である納入リードタイム(以下、リードタイムをLTという)
- 購入LS当たりの購入単価
⑥ 保管条件付き発注では、梱包資材を対象とし、購入計画に基づいて、1年分相当を一括で発注する。購入単価は発注時に決定する。保管条件付き発注では、資材メーカーとの間で次を取り決めている。
- 1回の納入の納入数量を示す納入LS
- 納入依頼してから倉庫に納入するまでの日数である納入LT
⑦ 金属材料、樹脂材料、薬品類は、納入時点でB社の資産となるが、梱包資材は、資材メーカーから製造の完了通知を受けた時点でB社の資産となる。
- 発注の方法
① 全ての発注は、発注番号で識別し、発注区分、購買組織、発注年月日をもつ。
② 長期発注では、品目別に月当たりの納入予定数量、納入開始年月、納入月数を決めている。
③ スポット発注では、発注ごとに、品目、納入期限年月日、発注数量、納入先倉庫を決めている。
④ 定量発注では、日次で在庫数量を確認し、在庫数量が基準在庫数量を下回った定量発注品について発注を掛け、納入予定年月日をもつ。
⑤ 保管条件付き発注は、1年に1回の頻度で行う。保管条件付き発注ごとに資材メーカーとの間で品目、検収予定年月日、購入単価、発注数量、保管期限年月日を決める。資材メーカーからの製造完了の通知を受けて、検収年月日、購入金額を記録する。
- 納入依頼の方法
- 納入依頼の対象業務
① 納入依頼は、長期発注と保管条件付き発注の場合に行う。
- 長期発注に対する納入依頼
① 納入依頼は、納入開始年月から納入月数分の毎月を対象に、納入先の倉庫、納入依頼数量、納入予定年月日を確定させて、納入予定年月日の2週間前までに行う。なお、1日当たり納入先の倉庫ごとに、全ての金属材料に対する納入依頼数量の合計は12ロール以内にしている。
② 納入依頼では、同月内に同じ納入先の倉庫を複数回指定することもある。
③ 資材メーカーへは、長期発注番号、購入対象年月、月内納入依頼番号を指定して、通知年月日、納入先倉庫、納入予定年月日、納入依頼数量を決めて通知する。
- 保管条件付き発注に対する納入依頼
① 保管条件付き発注の納入では、定量発注と同様に、日次で在庫数量を確認し、在庫数量が基準在庫数量を下回った梱包資材について納入依頼を行う。
② 納入依頼は発注に対して行い、納入先倉庫、納入依頼年月日をもつ。
- 納入依頼の対象業務
- 納入の方法
- 長期発注に対する納入
① 納入依頼ごとに納入を受ける。
② 納入ごとに、納入年月日、購入金額(購入単価と納入されたロールごとの実測数量の総和の積)を記録する。
③ 納入ごとロールごとに、納入の明細を記録する。
- スポット発注に対する納入
① 発注に対する納入は分割され得る。
② 納入ごとに、納入年月日、購入金額(購入単価と納入されたロールごとの実測数量の総和の積)を記録する。
③ 納入ごとロールごとに、納入の明細を記録する。
- 定量発注に対する納入
① 資材メーカーが同日に納入できる発注に対してまとめて納入を受ける。
② 納入に当たっては、発注に対応させた納入明細を納入で括る。
③ 納入は、定量発注納入番号で識別し、資材メーカー、納入年月日、納入先倉庫を記録する。
- 保管条件付き発注に対する納入
① 納入依頼ごとに納入を受ける。
- 長期発注に対する納入
- 入庫の方法
① 納入された資材について、品目分類によって定まる保管方法に基づいて、棚に保管する指示を出す。入庫は納入を受けた当日中に行う。
【概念データモデルと関係スキーマの設計】
- 概念データモデル及び関係スキーマの設計方針
- 関係スキーマは第3正規形にし、多対多のリレーションシップは用いない。
- リレーションシップが1対1の場合、意味的に後からインスタンスが発生する側に外部キー属性を配置する。
- 概念データモデルでは、リレーションシップについて、対応関係にゼロを含むか否かを表す"○"又は"●"は記述しない。
- 概念データモデル及び関係スキーマでは、マスター及び在庫の領域と、トランザクションの領域を分けて作成し、マスターとトランザクションとの間のリレーションシップは記述しない。
- 実体の部分集合が認識できる場合、その部分集合の関係に固有の属性があるときは部分集合をサブタイプとして切り出す。
- サブタイプが存在する場合、他のエンティティタイプとのリレーションシップは、スーパータイプ又はいずれかのサブタイプの適切な方との間に設定する。
- 関係スキーマの記述において、定義域を表す単語の標準化と簡略化のために、表1に示す単語を略号に置き換えて記述する。
表1 定義域を表す単語の略号への置換え 単語 番号 年月日 年月 コード 区分 単価 金額 数量 略号 # YMD YM C K @ ¥ Q - 設計した概念データモデル及び関係スキーマ
マスター及び在庫の領域の概念データモデルを図1に、トランザクションの領域の概念データモデルを図2に、マスター及び在庫の領域の関係スキーマを図3に、トランザクションの領域の関係スキーマを図4に示す。
図1 マスター及び在庫の領域の概念データモデル(未完成) 図2 トランザクションの領域の概念データモデル(未完成)
【関係スキーマ】
概念データモデルを基に、関係スキーマを設計した。マスター及び在庫の領域の関係スキーマを図3に、トランザクションの領域の関係スキーマを図4に示す。


解答に当たっては、巻頭の表記ルールに従うこと。また、エンティティタイプ名、関係名、属性名は、本文中の字句を用いて適切な名称とすること。関係スキーマに入れる属性名を答える場合、主キーを表す下線、外部キーを表す破線の下線についても答えること。