2024年 秋期 データベーススペシャリスト試験 問1

オンライン学習プラットフォームの概念データモデリング

以下の記述を読んで、設問に答えよ。

教育事業者のA社は、オンライン学習プラットフォーム(以下、PFという)を運営している。このたび、新規要件の追加に伴い、データベースを再設計した。

【現行業務】

1. アカウント

(1) PFを利用する個人をアカウントと呼び、アカウント番号(以下、番号を#で示す)で識別する。

(2) PF上で学習教材を受講するアカウントを受講生と呼ぶ。受講生としてアカウントを登録する際、学習教材を購入するための支払情報を登録する。後述する講師としてのアカウントを既に保持している場合、再度アカウントを登録する必要はなく、支払情報を追加で登録する。

(3) PF上で受講生に提供する学習教材を制作するアカウントを講師と呼ぶ。講師としてアカウントを登録する際、自身のプロフィールを登録する。受講生としてのアカウントを既に保持している場合、再度アカウントを登録する必要はなく、自身のプロフィールを追加で登録する。

2. コース

(1) コースは、講師がPF上で受講生に提供する一連の学習教材を指し、コース#で識別する。各コースの制作は1名の講師が行い、制作した講師が分かるようになっている。全て有料であり、標準価格を設定している。

(2) コースは、複数のセクションから成る。セクションは、コースごとにセクション#で識別する。

(3) セクションは、一つ又は複数の講義動画と、講義動画を視聴した後の理解度を確認する幾つかのテストから成る。講義動画とテストとを併せてコンテンツと呼び、セクションごとにコンテンツ#で識別する。

  • テストは、複数の設問から成る。設問は、テストごとに設問#で識別する。
  • 設問は、全て単一選択式であり、設問ごとに設問文と配点を設定する。
  • 設問の各選択肢は、設問ごとに選択肢#で識別し、選択文と正解フラグを設定する。

3. コース購入

(1) 受講生は、コースを検索して、受講したいコースを購入する。コースの購入は、コース購入#で識別する。購入情報(購入年月日、購入価格及び受講生アカウント#)は、PF上に記録される。

(2) 受講生は、PFで利用できるクーポンを使用すると、標準価格より安くコースを購入できる。クーポンを使用する際は、クーポン#を指定して、購入の手続を行う。クーポンの併用はできない。

  • クーポンは、講師が自身のコースの販売促進を目的に発行している。
  • クーポンは、クーポン#で識別し、割引率や値引額、クーポンの適用期間及び同一クーポンの使用可能人数をもつ。使用可能人数は最大1,000名であり、クーポン使用者数が使用可能人数の上限に達すると、適用期間にかかわらず、クーポンの使用は不可となる。

(3) 受講生は、お薦めしたいコースがある場合、アカウントをもっている相手にコースをプレゼントすることができる。受講生がコースをプレゼントするには、相手のアカウントと対象のコースをそれぞれ一つ指定して購入の手続を行う。

4. コース受講

(1) 受講生は、購入したコース及びプレゼントされたコースを、いつでも受講することができる。

① コンテンツの受講の完了は、講義動画については視聴を終えた時点、テストについては全設問に解答した時点である。セクション内の全コンテンツの受講が完了するとセクションの受講が完了となり、全セクションの受講が完了するとコースの受講が完了となる。

② 自己研鑽が目的なので、どのコンテンツから受講してもよい。テストに合格基準点はなく、どのコンテンツも繰り返し受講することができる。

③ コースの受講中又は完了後、5段階評価と感想を登録することができる。

④ 受講生は、自分が最後に実施したテストで選択した各設問の選択肢と解答日時を確認することができる。また、自分が過去に実施したテストについては、最高獲得点数と、全設問の合計点数の履歴を確認できる。

(2) 受講生は、コンテンツの内容に疑問があれば、PF上で講師に質問することができる。各質問に対する講師からのコメントは1回だけできる。

5. 購入実績及び受講の確認

講師はPF上で、自分が制作したコースを購入した受講生の購入情報、クーポンを使用した場合のクーポン#、受講生による5段階評価及び感想を確認することができる。

【企業向けサービスの追加】

PFに、次のような企業向けのサービスを追加することにした。

1. 受講生の登録

企業は、研修対象の従業員を受講生としてアカウントを登録する。これを法人受講生と呼び、現行業務の受講生とは区別する。既に個人でアカウントを保持していても、法人用のアカウントを新たに付与する。

2. 研修カリキュラムの登録

(1) 企業は、受講させる一つ以上のコースをまとめた研修カリキュラムを作成する。研修カリキュラムは、企業ごとに研修カリキュラム#で識別し、研修カリキュラム名をもつ。研修カリキュラムに含まれるコースには、受講順を設定する。

(2) 企業は、法人受講生に対して一つ以上の研修カリキュラムを受講させる。

(3) 研修カリキュラムへの法人受講生の割当てでは、あらかじめ複数の法人受講生を束ねたグループを作成し、グループ単位で割当てを行う。グループは、企業ごとにグループ#で識別し、グループ名をもつ。また、同じ研修カリキュラムでも、割り当てられるグループによって、受講開始可能年月日及び受講完了期限年月日が異なる場合がある。

(4) テストを含むコースについては、研修カリキュラムごとに各テストの合格基準点を設定できる。

3. 法人受講生によるコース受講

(1) 法人受講生は、指定された研修カリキュラムを期限までに受講する。受講を開始すると、研修カリキュラム受講開始日時が記録される。全てのコースの受講が完了すると、研修カリキュラムが完了となり、研修カリキュラム受講完了日時が記録される。

(2) 現行業務のコース受講と同じサービスを提供するが、企業が合格基準点を定めているテストについては、合格基準点に達しないとテストの受講は完了とならない。

【受講生からの要望】

受講生から、学習に対する理解を深めるために、次の要望があった。

  • コースを提供する講師だけではなく、他の講師及び受講生も質問に対して回数に制限なくコメントできるようにしてほしい。
  • その際、誰がコメントしたかを特定できるようにしてほしい。
  • 質問だけではなく、既出のコメントを指定してコメントできるようにしてほしい。

【概念データモデルと関係スキーマの設計】

1. 【現行業務】に基づく設計

現行業務の概念データモデルを図1に、関係スキーマを図2に示す。

現行業務の概念データモデル
図1 現行業務の概念データモデル(未完成)
図2 現行業務の関係スキーマ(未完成)
図2 現行業務の関係スキーマ(未完成)

2. 【企業向けサービスの追加】に基づく設計

企業向けサービスの追加部分の概念データモデルを図3に、関係スキーマを図4に示す。

図3 企業向けサービスの追加部分の概念データモデル(未完成)
図3 企業向けサービスの追加部分の概念データモデル(未完成)
図4 企業向けサービスの追加部分の関係スキーマ(未完成)
図4 企業向けサービスの追加部分の関係スキーマ(未完成)

解答に当たっては、各項の表記ルールに従うこと。ただし、エンティティタイプ間の対応関係にゼロを含むか否かの表記は必要ない。エンティティタイプ間のリレーションシップとして「多対多」のリレーションシップを用いないこと。サブタイプが存在する場合、他のエンティティタイプとのリレーションシップは、スーパータイプ又はいずれかのサブタイプの適切な方との間に設定すること。同一のエンティティタイプ間に異なる役割をもつ複数のリレーションシップが存在する場合、役割の数だけリレーションシップを表す線を記述すること。属性名は、意味を識別できる適切な名称とすること。関係スキーマに入れる属性を答える場合、主キーを表す下線、外部キーを表す破線の下線についても答えること。

出典:令和6年度 秋期 データベーススペシャリスト試験 午後Ⅰ 問1